ゆがむくうかん

□真綿のような愉悦に包まれて溶けて消えていきたいの
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※「この手で触れたいのは〜」の続き。




ずしり、と心地の良い重さが腰のあたりに沈んできた。
時間は、夕刻。まだ、今からする行為にはふさわしくない時間。
目の前には、少しだけ頬を染めて、恥ずかしそうに下を向いている佐久間が自分の上に乗っている。
ぎゅっと、握り拳を作って。
時間が夕刻だろうと、そんな姿を見たらもう抑えが効かなくなってしまうのだ。
それくらい、目の前に居る彼は、言い表せないほどに綺麗で―――、欲情してしまう。
ゆっくりと、源田は佐久間の細い手首をつかんで、自分のほうに引き寄せるかのように引く。

「力、抜いてろ」

「ぁ―――ま、って」

ぱっと、強すぎない力で佐久間はその手を振り払う。
源田はどうしてそうなったのかわからずにきょとんとしていたが、それには触れずに、佐久間は続ける。

「俺に、させて」

「………」

…俺に、させて。
それがどんな意味を持ってるか、なんて、
――わかりきっている事だ。
でも嫌だとも言えなかった。
―――佐久間が自分からしてくれるのなんて、これが初めてなんだから。
今は、付き合い始めてからも滅多にないくらいにデレている状態なのだ。
それを逃したら、到底チャンスはない。(無理矢理やらせたら後で殴られるだろうし)

「――怪我が痛むのなんて、お前に触れられなかったのにくらべたら痛くない。俺にしてもらうのは、嫌か…?」

「…嫌じゃない」

だって、そんな事言われたらこう言うしか無いだろ。
嫌じゃないと言われた佐久間は、「よかった、」とかすかに頬を赤らめて笑う。
(そんなやらしい顔、どこで覚えてきたんだか)と源田はため息をついて、病院着のズボンを脱がしにかかる佐久間の表情をずっと見ていた。
ひっ、と中から出たそり立つモノに怯えるような仕草を見せ(軽く傷ついた)、それから少しだけ、ゆっくりとそれに触れて、その指を引っ込める。

「なに怖がってんだよ…ヤってる最中、たまにソレの下品な呼び方、大声で叫ぶだろ」

「!うううううるさい…ッ!!あれは、あれはただ…ッ、…もういい!」

こうなったら意地でも、と佐久間はソレにためらいなく触れ、これまたためらいなく口に含んだ。
あまりにいきなりすぎてからだがついて行けず、佐久間の口の中でそれがびくんと跳ねる。
それに「んっ」と呻きながらも、口の中で彼は必死にソレに舌をはい回らせた。
ゆっくりと、ねっとりと。できるだけ、濃厚に。
幹から、段々と上へ、唇で啄むように、それからまた深く。

「ん、ン…ぁ、ぅく」

「ッ……く…」

佐久間が頭を動かすたびに、ごり、とソレが彼の上顎や喉の近くを擦るのが、源田にもわかった。
それで咳き込みながらもまだ、佐久間はソレをくわえている。

―――無理しなくてもいいのに。

「…あんま無理しなくていいから、佐久間」

「それって、俺が下手だって言いたいのか…?」

「いや、そういうんじゃなくてだな…気遣い、だよ」
「………そ、か」

てっきり「普段はそんな事しないくせに」とか突っ込まれるかと思ったが、あっさりと頷き、佐久間はまた先程までの行為に戻った。
「…すごく、硬い…がちがちじゃないか。…いつから溜めてた?」

「…入院した時から、ずっと」

いくら無敗の歴史(破られたが)のあるサッカー部のゴールキーパーとはいえ、やはり中学二年――丁度、そういう事に興味が沸いてくる14歳だ。
そんな時期に、長い間何もしないのは、つらい。

「…ごめん、今まで…してやれなくて。つらかったよな」

「それは…お前だってだろ」

「俺は…いいんだよ。でも……今日は、今日くらいは、お前の事…キモチ良く、シてあげたい」

「――――」

…なんて可愛い事言うんだ、こいつ。
いつもこうならいいのに、と無駄だとわかっている願望を心の中に描きながら、源田は自分のソレを口の中で必死に愛撫する佐久間の頭を撫でた。

「ん…、」

「別に心配しなくても、俺は十分気持ちいいからな」
「………ん」

そう言ってやると、佐久間は嬉しそうに目を細めた。
(――というか、そんな風に俺を満足させようと頑張ってる所が可愛いんだけどな)


――こん、こん

「先輩方ー、入りますよー」

(げ……!)

突如、ドアの外からノックの音と声が聞こえた。
見舞いに来たのだろう――全くなんてタイミングだ。源田は即座に腰まで布団をかぶり、自分の股に顔を埋める佐久間を隠した。
それと同時に入ってきたのは、髪の毛が跳ねたヘッドホン少年。

「――な、成神。久しぶりだな」

「はい、久しぶりっす。――あれ、佐久間先輩は?」
「あいつは風呂だよ。たまには体洗わないと駄目だしな」

「珍しいですね、万年発情期の源田先輩が一緒に行かないなんて」

「俺だって自粛す…、」

言い返そうとした時、源田は自らの肉の楔にむずがゆい感覚が走ったのを感じた。

「ッうぁ…!?」

「どうかしましたか、先輩」

「いや…、まだ怪我が痛むみたいだ」

なんとか、そう言ってごまかした。(少し苦しい嘘ではあったが)
でも、確認するまでもない――布団の下で、ソレに歯を立てて甘噛みする佐久間が見えそうだ。
きっと今ごろは俺に見えないからってからかうみたいに舌を出しているに違いない。
こいつ、怪我人だからってもう容赦しない。ていうか怪我なんか平気だっていったのはあいつだろ。
成神が出ていったらまともにしゃべれないようにしてやる。

源田は怒りとか色々なものを、シーツを握りしめる事で押さえ込み、平常心を保って成神と会話した。



「―――っと、俺もう帰りますね」

そう言って事情を知らないまま後輩が病室を出ていったのは、それから15分後の事だった。

ばたん、と扉が閉められたあと、一拍おいて「ぷはっ」と布団を押しのけて佐久間が這い出てきた。

「いきなり何すんだ馬鹿!」

「俺の台詞だあほ!後輩が見舞いに来てんのにチ(ピ―――)に甘噛みする奴がいるか!」

「病室で大声でチ(ピ―――)とか言うな!二人部屋とはいえ自重しろ!…萎えないように刺激してたんだよ、悪いか!」

「成神にバレたらどうすんだよ!」

「あーもういい!さっさと続けるぞ!」

佐久間は強引に事を進め、またさっきのように行為に戻った。
今度は攻め方を変えて、先端を舌で刺激しながら右手で竿を扱く。

「…ッ!佐久間それ、反則…っ」

「んっ……、ちゅ……はぁ…っ、気持ち…いい?」

言って、くわえながら上目遣いで見つめてくる。
…それ、もっと反則なんだけどな。
やられっぱなしも癪だったから、源田も佐久間の後孔に手を伸ばし、指を侵入させた。

「ん……っ!」

入口の近くで指先を動かすと、佐久間はもどかしそうに腰を揺らした。
…可愛い。
奥へ潜りこんで、狭い中を拡げるように押すと、佐久間の細い腰が跳ねた。
…可愛い。つーか、エロい。
佐久間の反応が可愛くてさらに奥まで潜ろうとすると、同時に限界が迫ってきた。
口の中に出すといつもは怒るよなあ…今はどんな反応をするんだろうか。

「……佐久間、」

「わかってる…、全部受け止めるから、全部出して」
「――――ッ…」

今まで、佐久間から滅多に聞く事のなかった言葉に、源田は酷く欲情した。
悪い気もしたが、腰に腕をまわしてしがみついた恋人は離れてくれない。

「んっ―――」

一瞬だけ、背筋をぞくぞくと電流のような何かが駆け抜け、次の一瞬には佐久間の口内に真っ白な放悦を吐き出していた。
続いて、ごくり、と彼の喉が鳴る。
―――飲んだ。

「………にが…」

「………ごめん」

「でも…源田のだから、いい」



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