拍手ありがとうございます!!
御礼と言う程ではありませんが、ちょっとした小話をどうぞ♪
連作【小さな宝物】の続き…繋ぎ、かな(^_^;)





九番隊の日常





「うおっ!?」

…ごちん


就業時間もそろそろ終わりも近づいた夕刻、戸口に向かった隊長の驚く声から一拍置いて響いた硬そうな音。


「やべぇ!おい、大丈夫か!?」

「隊長?どうされました…っあああああ!ちょ、ふ、副隊長―――!!」


珍しいことに然程忙しくも無かった一日で、もうすぐ恋次が帰ってくるなぁとぼんやり考えていた檜佐木は、己を呼ぶ声に我に返った。

いったい何が起きたと言うのか。

次第にざわつく周囲を他所に、のんびりとした体で立ち上がり人垣の中心へと向かったが、疲れで霞んでいた視界は一気に晴れた。


「何事ですか隊長…って、恋次!?」

「ちょうど出入り口んところでぶつかって、ふっ飛ばしちまった!」


廊下の真ん中に転がる小さな身体は、先ほどまで隊主室に飛び込んでくると思い込んでいたもので。

慌てて駆け寄り抱き起こそうとしたけれど、いくら石頭とはいえ後頭部を強打したのであれば動かさないほうがいいと気付き、動きを止める。

すぐ隣にいた七席に救護班への連絡を託した上で、状況を観察すべく、再度恋次に視線を向けた時…。


「………う、う―ん…」

「恋次!?」

「しゅ、へ―?」

「だ、だ、大丈夫か!?ああああ動くな!寝てろ!」


意識を取り戻し、きょとんとした顔で檜佐木を見上げる恋次は何が起きたか分かっていない様子。


「おれ、なんでろ―かにねてんだ?」

「戸口んとこで隊長にぶつかったんだよ…ちょっとじっとしてろよ」


ぼやきながら半身を起こした状態の恋次の身体をチェックをしていくと、後頭部にちょっとしたコブが出来てるのを発見したが、それ以外に異常は見当たらなかった。

そうなると今度は躾に入らなければと小言を開始。


「いつも言ってるだろ?駆け込むなって」

「…はぁい」

「最近治まってきてたのに、今日はどうしたってんだ」

「しゅうへ―に早く見せたかったから!」

「見せる?何を?」

「おやつ!えっと…あれ?あれ!?」


慌てて左右の手を見渡しても、そこはカラ。

周囲を見渡す恋次につられて檜佐木も視線を巡らせると、六車の足元に何やら白いものが落ちている。


「これ、か…?」


大人の手のひらより少し大きいくらいの紙袋を見つけたが、どう見てもぺっちゃんこでおやつが入っているようには思えなかった。

とりあえず手にとってみると、多少の重みは感じる…察するに、騒乱の中踏み潰されてしまったらしい。


「え―っと、その…う―ん…」


パァになってしまった事実を告げることは元より、中身を覗いてみることも出来ずに檜佐木は恋次に背を向けたまま唸る。

泣く。

絶対、泣く。

泣くだけで済めばいいけれど、おやつを台無しにしてしまった相手が誰かを考えると頭が痛い。


「しゅ―へ―?」

「あ―…」

「修…ひ、檜佐木?どうした?」

「え―…」


何とかして誤魔化せないかと思案を巡らすも、若干パニック気味な頭は回転してくれず、檜佐木は唸るしかなかった。


「おい、まさか…」

「……………」


無言で己を見上げる檜佐木の青褪めた顔を見た六車もまた事実を悟り、同じように唸り始める。

察するに踏み潰したのは六車であり、そこから今後起こりうる事態を予想したのだろう。

かと言って、唸っていても状況は打破できない。

泣かれるのは覚悟の上!と腹を括り、恋次へと向き直って手の上の物を見せた。


「あった!」


探していた物を見つけ、大喜びの恋次とは対照的に、檜佐木と六車の表情は暗い。


(ああ、やっぱりこれか…)


口には出さなくても思ったことは同じだろう。

そして、想像しているこの後の修羅場も。


「………」


顔を輝かせ檜佐木の手から袋をとった恋次の様子が、徐々に変わっていく。


「………」

「れ、れんじ…?」

「………」

「えぇっと、うん…なんだ…その…」

「………うぇっ」

「あ、あのな?恋次…事故!そう!事故なんだよ!」

「そっ、そうだ!事故だ!踏み潰した俺も駆け込んできたお前も態とじゃないし…これは事故だ!」

「隊長!そんな余計なこと言わんでください!」

「うぇっ…うぇ、う、あああああんっ!」

「あああああ!」


目当ての物がお釈迦になってしまったことと、その原因が自分だけでなくいつも何かと張り合う相手だったことにショックを受け、恋次は泣き出してしまった。

予想していたとはいえ、やはり目の前で実際に泣かれてしまうと慌ててしまうもので。

涙と鼻水で顔をぐしゃぐしゃにした幼子に平謝りする隊長と、宥めつつうっかり口を滑らす主に苦言を呈する副隊長という、尸魂界に措いてはある意味平和な光景を隊員たちは遠巻きに眺めているのであった。




後日、現世にて強面の男二人が赤髪の子どもと共にドーナツショップで目撃されたこと。

そして猫の顔を模ったドーナツを前に満面の笑みを見せられ、可愛さのあまり悶絶していたことを、ここに述べておこう。





End.





ミ○ドのキ○ティドーナツ食っての妄想。
すっごい短くてスマヌ(>_<)



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