鰤二次文(短編)

□†花語り
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其の弐 《桜》

「緋真には好いた花はあるか?」
「はい、お花はどれも好きですが・・・私が一番きれいだと思ったのは白哉様の『千本桜』です。」
「可笑しな事を言う。あれは桜の花弁に似た刃だ。いかに美しく見えようとも武器であることに変わりはない。」
白哉は一笑に付した。
緋真も「そうですね。」と笑った。
「白哉様と一緒に観た戌吊の枝垂桜はきれいでした。咲いている時も、散るさまも。」
白哉の斬魄刀と同じ名を持つ『千本桜』という枝垂桜。
その木は今はもう無い。

「確かに、見事な桜だったな。ただ、私にとってはその満開の枝垂桜も緋真には及ばなかったが。」
「そのような見え透いたお世辞を仰るのは白哉様だけですよ?」
「それを聞いて安心した。仮に他の者が申した場合は聞き流しておけばよい。」

『花』ではない・・・確かに白哉様のおっしゃる通りなのですが・・・
でも、その美しさは緋真の心に焼き付いてしまったのです。
白哉様の斬魄刀が桜のように散る様と、その桜吹雪の中に孤高の月のように屹然と立つ白哉様のお姿が。

ですから、白哉様。
緋真がこの尸魂界を去らなければならなくなりましたら・・・どうか『千本桜』の桜吹雪で見送って下さいませ。
私はそれもって『緋真』を終わりたいと思います。

白哉にすら気付かれないように心の一番奥で密かに願う。
決して口に出せない、白哉への願い。


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※桜の章は一部『月の下にて・・・』を含む一連のお話にリンクした内容になっております。


 
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