物置

□過去拍手小咄・壱
24ページ/24ページ


*2012年1月度掲載分*


 



《 連想ゲーム 》



「きれいに色づきましたね」

庭の立派な南天を見た緋真は隣に立つ白哉を見上げた。
白い実を付けた南天と赤い実を付けた南天が交わるように並び、互いの色を引き立て合っている。

「“赤”と“白”と聞いて何を思い浮かべる?」

白哉が不意に問うた。

「“花餅”」
「花餅?それは何だ?」
「紅白のお餅を使ったお正月飾りだそうです…私も見た事は無いのですが」
「ほう…興味深いな。“紅梅”と“白梅”」
「“薄花桜”」
「それは青紫に近い色だろう?」
「着物の“重ね”の方です。ほら、白と紅を重ねる時の…」
「成る程。ならば…“雪の下”」
「え…と、他には…」
「一番大事なものがまだ出ておらぬ」

白哉の呟きに緋真は躊躇いながら…

「“白哉様”と…“私”」
「“緋真”と、“私”」

満足げな表情を見せた白哉は、緋真の顎を指先で軽く捉えると顔を持ち上げ、唇をそっと奪った。

「“桜”」

白哉の声に目を開いた緋真の頬は薄紅に染まる。
瞳の先には月輪よりも麗しい夫が微かに笑んでいた。

桜の名を冠した斬魄刀を従える死神。

「“白哉様”」

桜はあなたそのものです…白哉様 ―――



fin
 
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ