物置

□過去拍手小咄・壱
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*2011年12月度掲載分*


 



《 聖夜の散歩 》



すっかり暗くなった冬の空座町。
繁華街の通り沿いの店にはクリスマスの飾りが照明に照らされてキラキラと輝き、クリスマスソングが絶え間なく流れている。
賑わう人波の中に赤い髪を無造作に括った恋次の姿があった。
その横にはルキアが居る。

「今日の現世は一段と冷えるな。大丈夫か、ルキア?」
「たわけ!私の斬魂刀が氷雪系だと云う事を忘れたのか?この程度の寒さ、何とも無いに決まっておるだろう!!」
「分厚いコートにマフラー、手袋…完全防寒しといて何言ってんだよ」

恋次が呆れたようにルキアを見やった。

「う、うるさい!TPOだ、周りへの配慮だ!この季節に半袖姿ではおかしいだろう」
「分かった分かった。そういうことにしといてやるよ」

真剣に反論するルキアを宥めてから恋次が訊ねた。

「そういや、何で突然現世の街を歩きたいなんて言い出したんだ?」

訊かれたルキアは視線を逸らして小さな声で呟いた。

「 ――― “朽木”の名が及ばぬ場所に来たかったのだ」

尸魂界ではどこに居ようとも、ルキアは“朽木ルキア”として扱われるのだ。

「ルキア、お前…」

やっぱり、貴族としての生活は辛いのか ―――

「勘違いするな、恋次。私は幸せだぞ…少なくとも今はそう言える」

恋次を見上げるルキアの力強い瞳はその言葉を真実だと物語っていた。

ちぇっ…俺はまだ、アンタを追い越せそうにねえよ ――― 朽木隊長

「ああ…分かってるって」

恋次は安堵したような口惜しいような、ちょっと複雑な表情を浮かべるとルキアの頭に手のひらを置いた。
ルキアはその下でコッソリと頬を染める。

「別に深い意味は無い。私は、ただお前と一緒に歩きたかったのだ」

特別ではない普通の人々に紛れて ――― 普通の恋人のように、この特別な夜を


fin



クリスマスのお話でキャラはルキアと恋次にしようと決めてから考えたものです。
普段ルキアの周りに出てくるキャラ達は至って普通に接していますよね。
現世組は元々階級意識はありませんし、死神にしても貴族と同格の隊長・副隊長クラスが多かったり、全く気にしていなかったり。
でも、ストーリー初期やオリジナル小説では、やはり『朽木』の名は相当意識されていたように思います。
ルキア自身も『朽木ルキア』として振る舞っている筈です。
そう云う意識の無い現世で、気心の知れた、そして、少なからず好意を持っている恋次と唯の『ルキア』として過ごして貰いました。
一護や兄様とは違う恋次との絆は、ルキアにとって一番安心出来るものであって欲しいと願うlokoです。
 
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