小説

□‥
2ページ/6ページ



時は経ち、僕と母は日本を訪れた。


電車に乗り、外を眺めるとイタリアには無い景色が鮮やかに目に映る。
ずっと外を眺めている僕に母は言った。



「ねぇ、骸。覚えてないかもしれないけれど‥‥貴方はまだ幼い頃に日本を訪れたことがあるの」



「‥そうなのですか?」



僕は母を振り返り、首を傾げた。



「今から向かう黒曜町に行けば‥分かるわ‥」



母は優しく微笑み僕の髪を撫でた。



「こく‥よう、ちょう‥‥」



まだ知らない町の名を、一文字一文字確かめるように噤んだ。







次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ