□眠り姫にキスを
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小雪ちらつく年の瀬。

風は冷たく、身を切られるような寒さが堪える日だった。



「相変わらず京の冬は冷え込むな。
この寒さだけはいただけないぜ、まったく」


何度体験してもこの寒さに慣れることはないだろう。


「でも千鶴は雪が降って喜ぶだろうな」



つい先日雪が降ってきた時は瞳をキラキラと輝かせていて、ずっと眺めていたくなるくらい愛らしいものだった。



「せっかくだし教えてやるか」


まだ誰も起きてくるような時刻ではないが、早起きの千鶴ならもう起きる頃だろう。



「千鶴、起きてるか?雪が降ってき…」


「けほっ、こほんっ」


返事の代わりに聞こえてきたのは苦しそうに咳き込む声。


「千鶴!大丈夫か!?」


急いで後ろに回って背中をさする。


「原田さ…けほっ!」


「馬鹿!無理に喋らなくていい」


咳をし過ぎて息苦しいのだろう、目尻に溜まった涙が痛ましい。



「…体熱いな、風邪か」


千鶴は心配をかけまいとして誰にも言わなかったんだろう。

だが、こんなに酷くなるまで気づかなかった自分に反土が出そうだ。



「わたしはだいじょ…ぶですから、早く離れてくださ…い。
原田さんにうつります…」


弱々しく体を離そうとするが、まるで力が入っていない。



「んなこと気にすんな、病人なんだからもっと甘えていいんだよ。

…離れて、なんて言われたら傷つくだろ?」


「でも隊務が…」


こんな時でも千鶴は他人の心配ばかりして自分を労ろうとしない。


だからこそ傍にいてやりたい、千鶴が安心してすべてを委ねられるような存在になりたい。



「今日は非番だから大丈夫だ、何も心配しなくていい」


そう答えると千鶴はようやく安心したのかホッと息をついて微笑んだ。


「ありがとうございます…。やっぱり私、原田さん・・・で…す」


「!お前今っ」


すぅ。


疲れたのかそれきり眠りについてしまったから確認はできなかったが、今確かに。



「…大好きって言ったよな?」


もう一度はっきりと聞きたい。


けれど病人を無理矢理起こして聞くことはできない、それが大切な人ならなおのこと。


「眠り姫が目を覚ますまで我慢するか…」


だから先に口づけをひとつだけ


「…ん」



姫の目覚めまであと数時間…。





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