□光る瞳にご用心
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「なんで斎藤君は千鶴ちゃんに手ださないの?」


ぶはっ


飲んでいた茶を吹き出しかけたのを必死に堪え飲み下したが気管に入って苦しい。

だが、ここで答えないと総司に怪しまれるだろう。


「げほっ、ごほっ!・・・・・なんのことだ」


「それだけ動揺しといて、なんだはないでしょ…」


総司は思いっきりあきれ顔だ。


「確信があったからカマをかけたわけじゃないけど、千鶴ちゃんと付き合ってるんでしょ?

…そしてまだナニもしてない、と」


「……。」


自分のことには無頓着なのに他人のことになると総司はひどく鋭くて厄介だ。


「無言は一番の答えだよ。やっぱり解りづらいようで解りやすいね、斎藤君は」


(これ以上口を閉ざしていても好き勝手言われるだけだろうな…)


「そうだったらどうだと言うんだ、お前に関係ないだろう」


「まぁいいじゃない、好奇心だよ、好奇心。

…無関係ってわけでもないしね」


猫が獲物を見つけた様な表情。
こうゆう顔をしている時の総司は大抵ロクなことを考えていない。


「なんだと?」


「だって相手が千鶴ちゃんだよ?
僕だけじゃなくて左之さんや平助君、あの鬼副長だって例外なく千鶴ちゃんのこと好きだよ」


スッと瞳が鋭くなる。


「だから斎藤君一人のモノにされるの、イヤなんだよね」


「勝手なことを…」


他の連中のことも取り上げて上手く隠しているが、要は自分のおもちゃを取られたくないだけだ。



「でも、まだ抱いてないみたいで安心したよ。やっぱり最初に刻むのは自分がいいし。

というわけで、格好つけてうかうかしてると千鶴ちゃん貰っちゃうよ?」



格好つけている?
…違う、そうではない。


「一度抱けば箍が外れそうだからだ…。

それに体が欲しくて千鶴と恋仲なわけではない」


不用意に触れて千鶴を怯えさせたくはない。


「大事過ぎて触れないって?それが格好つけてるって言うんだよ」


なんと言われても構わない。
大事にしたい、ただそれだけだ。



「…まぁ斎藤君らしいけど、じゃあ油断して攫われないように気をつけてね〜」


ひらひらと手を振り部屋を出て行く。



「奪おうとする本人が言うセリフじゃないだろう…」


可愛い恋人を持つと苦労が絶えない。





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