Long
□25th
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皿洗いをしながら、兵部は先程考えていたことをもう一度考える。
せっかくパンドラとバベルという壁を越えたというのに、次はこれか。
兵部は溜め息をついた。
もちろんまだ誰にも知られていないから大丈夫なだけで、知られれば周りは色々と言うのだろう。
だがこれは本人同士が気にしていないため、よほどのことがない限り別れる理由にはならない。
「それに比べて…」
年齢のことはどうだ。
いくらパンドラのリーダーを受け入れられたって、60歳以上違う男を簡単に受け入れてくれるかなんてわからない。
同い年くらいだと思い込んでいるし、余計にショックは大きいだろう。
皿を洗い終え、濡れた手をタオルで拭く。
「どうするかな…」
と言っても、告げる他無いのだが。
とりあえず、自分の気持ちを整理して、もう少し落ち着いてから話すことにしよう。
兵部はそれだけ決めると、2人分の紅茶を淹れるため湯を沸かし出した。
「はい、渚。」
「あ、ありがとう!」
兵部は淹れた紅茶と茶菓子をテーブルに置いた。
菓子は自分の部屋から取ってきたもので、渚の好きなクッキーだ。
兵部は彼女の向かい側にある席につき、紅茶を啜る。
「ねぇ。」
「ん?」
「…何かあった?」
その言葉に兵部の表情が強張った。
「何もないけど、どうして?」
必死に平静を装い答える。
「なんだか、悩んでるように見えたから…」
だが残念なことに渚にはバレていたようだ。
「何かあるの?」
「…………」
「京介…?」
兵部は少し考えてから、閉じていた口を僅かに開く。
だがそのとき、図ったように玄関のインターホンが鳴った。
2人の間に沈黙が流れる。
「…とりあえず出てくるね。待ってて。」
渚はそう言って玄関へ向かった。
辿り着くまでにもう一度鳴らされ、気の短い相手なんだと想像する。
セールスだろうか。
そう思っている間にもう一度鳴らされた。
「今開けます!」
強めの口調でそう言い放ち、渚はドアに手をかける。
だがドアを開け相手を確認すると、彼女は驚愕に目を見開いた。
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