Long

□24th
2ページ/4ページ


ディスプレイを確認すれば、その相手は賢木。


「修兄…?」


何かあったのだろうか、そう思いながら渚は電話に出た。


「はい。」


「お、渚。久しぶり。」


話しぶりからはあまり深刻そうではないが、何があったのだろう。


「どうかしたの?」


「いや、この間、またお前が引っ越したって聞いたからさ。」


「え、もうそんなに出回ってるの?」


早いねと言って渚は笑う。


電話の向こう側から賢木が笑ったのも聞こえた。


「また近いうちに遊びに行かせてもらってもいいか?」


「どうぞ。あんまり前と変わってないけどね。」


「じゃあまた仕事が一段落したらお邪魔するわ。」


いつになるかわかんねぇけどな、と言って賢木はまた笑う。


明るい彼の声に、少し元気をもらった。


「じゃあいつ来てもいいように綺麗にしておかなきゃね。」


「おー楽しみだ。急に電話して悪かったな。」


「ううん。大丈夫だよ。」


「サンキュー。じゃあな。」


「うん、じゃあね。」


渚は電話を切った。



「…ふぅ。」


そういえばまだ引っ越したことを伝えていなかった。


前回もそうだったが、やはりバベル内に広まってしまうんだなと苦笑する。


まぁ15年もバベルにいるのだから、職員が自分のことを話していても不思議はないか。


そういう考えに辿り着き、そこで考えるのをやめた。



「……っ…」


また携帯が鳴った。


今日はよく電話がかかってくる。


今度は誰だろう、そう思いディスプレイを確認した渚はその相手に驚いた。


「っ、京介さん…!」


急いで通話ボタンを押し、電話に出る。


「っ、はい!」


「あ、渚。今ちょっといいかい?」


「う、うん。」


突然すぎることに、渚は未だに驚いてうまく話せない。


「明日、お昼から会えないかな?」


「うん、大丈夫だよ。」


「ありがとう。じゃあまた明日ね。」


「…っ……」


それだけ伝えて兵部は一方的に電話を切ってしまった。


まだ、どこで会うのかも何時に待ち合わせるのかも約束していない。


「……また明日、直前に考えるのかもしれないし…」


あまり悪い方向には考えないようにしよう。


とにかく明日は兵部に会えるのだ。


前向きに考えるようにして、渚は夕食の準備に取りかかった。



.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ