Long
□24th
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「考えてみたら、京介さんと出会ってもうすぐ1年なんだね。」
想いが通じ合ってから、2人は時々一緒に過ごしていた。
出掛けたりもするが、渚が兵部の家に来るのが主なパターンだ。
兵部は新しい居住先を聞いてこないし、渚は彼を招待したことがない。
「…そうだね、もうそんなに経つのか……」
兵部は感慨深げに頷く。
「この1年、色々なことがあった気がする…」
「僕もだよ。」
それのほとんどがキミ関連だけどね。
兵部がそう付け足すと、渚は微笑んだ。
「そうだ。」
突然、何かを思い出したように兵部が言う。
「明日は僕、用事があるんだけど…」
「そっか…じゃあ明日は会えないんだね。」
「ごめんね。」
申し訳なさそうにする彼に、渚は気にしないでと笑った。
「また今度会うとき、何処か行きたいところはないかい?」
「特にないけど…今日一緒に夕飯食べたいかな。」
そう言った渚を、兵部は優しく撫でる。
「じゃあそうしようか。」
そんな会話をして毎日が過ぎていく。
だがこれが、幸せというものなんだろう。
渚は少し遠慮がちに、そっと兵部に体を寄せる。
兵部は彼女の行動に目を細め、そっと背中に腕を回した。
***
こんなことは、兵部と思いが通じ合ってもよくあること。
兵部と会う回数はそれほど多いわけではないのだ。
しかしそれが、さらに少なくなった。
まだ同じマンションにいたときの方が、一緒にいる時間は長かったかもしれない。
「何か、あったのかな…」
まだあの日から数日だし、兵部に限って誰か女性に会いに行っているということもないだろう。
だが、今まで恋愛というものをしたことのない渚には不安が募る。
毎日というのは迷惑だろうが、会いたいと思うのは駄目なことだろうか。
落ち込みながら部屋の中を行ったり来たりする。
そんなとき、携帯が鳴った。
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