Long

□23rd
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「できた。渚ー、でき…」


キッチンから顔を出した兵部はそこで言葉を止めた。


そのすぐそばで渚が立っていたからだ。


兵部は小さく息をつくと、困ったように笑った。


「仕方ない、キミはそういう子だからね…いいよ、座ってて。持っていくから。」


渚を食卓へ促し、彼は先程つくったものを取りに戻った。



そして持ってきたのは2人分のお粥とスープ。


「久しぶりだからね、胃に優しいものじゃないと。」


笑顔でそう言った兵部は、自分も席につき、手を合わせてから食べ始めた。


「いただき、ます…」


渚も戸惑いながら食べ始める。


久々に食べたものは、兵部がつくってくれたということもあってとても美味しいと渚は感じた。


温かさが心地よい。


しかし部屋には食器がぶつかる音しか聞こえず寂しいものがあった。


「………」


「………」


2人とも互いを見ずにただ黙って食事をしている。


何か話してほしい。


でも彼が何を思っているのかわからない以上話すのもつらい。


自分から話しかけることもできず、渚は食べるのをやめて皿をじっと見つめた。



「……渚。」


「……っ…」


今日初めて呼ばれた名前。


そのことに驚き渚は顔を上げて向かいに座る兵部を見た。


「もう、聞きたいことはないかい?」


「………」


本当はある。


聞きたくてたまらない。


だが聞くのが怖く、渚は黙っていた。


「…なければ……」


兵部は少し間を置く。


「…僕の話を、聞いてほしい。」


「…っ……」


手紙のことだろうか、それとも別のことだろうか。


渚は体を強張らせた。


「あぁ、そんなに身構えなくていい。まずはそれを全部食べて。じゃなきゃなかなか回復しないよ。」


彼はもう食べ終わったのか、いつかと同じように渚が食べ終わるのを待つ。


渚が食べ始めると、兵部はくすりと笑った。


「そんなに焦らないで。時間はたっぷりある。」


そしてあのときと同じような注意をする。


変わっていなかった彼に少し安堵して、渚は食べる速度を落とした。



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