Long
□23rd
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目が覚めると、渚は自分の部屋のものではないが見慣れた天井が目に入った。
懐かしい感じがする。
それに、なんだか手があたたかい。
まだぼうっとする頭でそんなことを考えていると、近くで声がかけられた。
「気がついたかい?」
「…っ……」
声の方を向けば、そこにいるのは兵部。
そういえば、任務の途中で意識を失ったのだと思い出した。
兵部は立ち上がり、窓の傍まで歩いていく。
少し手が寂しくなったのを感じた。
「驚いたよ。3日も眠ってたからね。一体どんな無茶をしたんだい?」
そう言った彼は困ったように眉を下げて微笑む。
そしてもう一度渚に近付くと、先程と同じように傍にある椅子に座った。
「あ、あの…」
ここはどこなのだろう。
上体を起こして話そうとすると、手で制されて戻される。
「まだ動かない方がいい。そのままでも話はできるからね。」
兵部はまた微笑んだ。
「まずキミが知りたがっていたことに答えるよ。ここは僕の部屋、キミが少し前まで住んでいた部屋の隣だよ。」
「ん……」
そして渚の頭を撫でた。
「他には何か聞きたいことはないかい?」
「…あの…、どうして私のところに来たんですか…?」
少し躊躇いがちに渚がそう聞くと、兵部は悲しそうな表情をする。
だがすぐにもとの表情に戻ると、渚を見て話し出した。
「キミは気付いてないだろうけど、無意識で自分に関することにプロテクトをかけてたんだよ。とても強力なのをね…」
渚は口を挟まず彼の話に耳を傾ける。
「だがそれが、あるとき急になくなった。あまりに急だったからね、キミの身に何かあったのかと思って探ってみたんだ。その時あの事件にキミが任務で出ているのがわかったんだよ。」
その話を黙って聞いていた渚は、最後まで聞いてあるひとつの疑問が浮かんだ。
「あの…」
「あぁ、キミが気を失っている間に僕が報告に行ったから心配しないで。ちゃんとキミの姿で行ったから何も問題ないよ。」
彼女の言葉は聞かずにそこまで言った兵部は、立ち上がって渚を見下ろし笑みを向ける。
「お腹空いただろ?すぐに用意するから待ってて。」
そしてキッチンへと去ってしまった。
残された渚は先程言いかけたことを小さく口にする。
「どうして、私の意識を探ったりしたの…?」
彼はもう会わないという手紙を残して去った。
そんな彼が何故自分のことを気にしたのだろう。
それに、自分はあんな手紙を渡してしまったのだから顔を合わせるのはつらい。
兵部はあれを読んだのだろうか、読んで尚平然と何もなかったかのように接するつもりなのか。
読んだからこそ、それに触れないよう平然としているのだろうか。
そう思うと急に怖くなり、渚は上体を起こす。
そして少しふらつきながら、兵部のいるキッチンへと歩いた。
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