Long

□22nd
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引っ越して数日が経った頃――


「…あれ…?」


少し目が霞んだ。


疲れているのかとも思ったが今は長期休暇で学校にも行っていないし、任務もなくてバベルにも行っていない。


「気のせい、かな…?」


今は普通に見ることができるし、何ともない。


寝不足のせいもあるかもしれないと、渚は気にしないことにした。




「あ、そういえば…」


しばらくして、桐壺が落ち着いたら一度バベルに顔を出してくれと言っていたのを思い出す。


最近は初めての学校生活を楽しめと言って、できるだけ任務を減らしてくれている。


そのおかげでしばらくバベルには行っていないが、そろそろ行った方がいいだろうか。


「…行った方がいいよね。」


そう決めた渚は、久々に特務エスパーの制服に着替え、バベルの前に瞬間移動した。



正規の入り口から入り、出社するのはいつぶりだろう。


「あら渚ちゃん、おはよう。」


「ここから来るなんて珍しいわね。」


受付嬢の奈津子とほたるに声をかけられ、渚も挨拶し返す。


「おはようございます。なんだか今日はこっちから来たくなって。」


「あー、瞬間移動ばっかりっていうのも色々あるもんね。」


そう言って苦笑する奈津子に、渚も苦笑を返した。


彼女たちは今、新たに入社した後輩の指導をしている。


「じゃあまた…」


邪魔しては悪いと、渚はなるべく早くその場を去った。


エレベーターに乗り、目的の階のボタンを押す。


そしてそこに着くと、まっすぐに局長室へ向かった。



「…失礼します。」


ノックをし、扉を開ける。


「おぉ、渚クン!久しぶりだネ!」


そこには以前会ったときと変わらず元気な桐壺と、隣でニコニコと笑う柏木の姿があった。


「お久しぶりです。」


「新しい家にはもう慣れたかネ?」


「はい。」


肯定すると、彼はうんうんと機嫌良さそうに頷いた。


「それはよかった。……ん?どうしたんだネ?」


「え…?」


「大丈夫?なんだか浮かない顔してるわよ?」


桐壺の言葉に何事かと思えば、柏木にそう言われた。


「いえ、大丈夫です。」


特に思い当たることのない渚は、そう言うしかなかった。


何も考えてなどいなかったのに、なぜそんな顔をしていたのだろう。



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