Long

□21st
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翌日、いつものようにバベルへ行った渚は、引っ越しの件についての話をした。



その返事を聞き、桐壺は随分と嬉しそうにニコニコ笑う。


「明日には移れるようにしておくから、荷物を纏めておいてくれたまえ。」


そんなに早く実行に移せるものなのだろうか。


しかし、彼ならそれも可能なのだろうと納得して苦笑する。


そして昨日と同じように一礼して局長室を出た渚は、そのまま瞬間移動して自宅に戻った。




今度は引っ越し業者の手は借りず、瞬間移動ですべて運ぶ。


運びやすいよう自分なりに纏めてはみたが、やはり必要なものはまだ仕舞えなかった。




ここを離れてしまえば、もう兵部とは会えないだろうか。


自分で離れると決めたし、あんな手紙を残されて既に希望はないが、やはり考えると胸が痛む。


「…………」


壁にそっと触れてみた。


詳しくは読み取れないが、今彼が部屋にいないことだけは読み取れた。


「もう近くにもいられないってこと…?」


今たまたまいないのか、ここしばらく部屋に戻っていないのかは定かではないが、この状況だとネガティブに考えてしまう。


「……最後、だし………」


どうせもう会うことはないし、迷惑はかけないはず。


渚は決心して、手紙を書き出した。


自分は兵部のことが好きだということ。


兵部がパンドラのリーダーだと知っても気にならなかったということ。


その他、伝えたかったこと全部を書いていく。


すべて書き終えた頃には紙いっぱいに文字が綴られていて笑ってしまった。


最後に「今までありがとう」という言葉を添えて、丁寧に折る。



“京介さんへ”



そして表にそう書いて、渚は誰もいない兵部の部屋へ瞬間移動した。


「京介さんだって勝手に入ってきてたし、1回くらいいいよね…」


勝手に入ったのを申し訳なく思いながら、渚は部屋の中を歩いて回る。


以前来たときと全然変わっておらず、少し安心できた。


「桃太郎くん…も、いないね……」



さっきの手紙をテーブルに置いていこうと渚はそれに向かった。


「………」


テーブルには薄く埃が積もっている。


そのことから長い間兵部が帰っていないということがわかってしまった。



もしかしたら、もう嫌われているのかもしれない。


「…返事を期待してるわけじゃ、ないし……」


しばらくテーブルを見つめた渚は、そっとその上に手紙を置いた。


「…さようなら、京介さん。」



もう一度部屋を見渡し、一度目を伏せて瞬間移動した。



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