Long

□20th
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そのあとの授業は散々なものだった。


隣の机を見ては催眠能力で変身していた兵部を思い出し、ふと中庭を見れば催眠を解き笑っていた兵部を思い出す。


極めつけは放課後だった。


当たり前だが、校門前に来ても兵部の姿はない。


彼がいなくても自分で瞬間移動などできるし、生活に支障を来すことはないのだが、精神的につらいものがあった。


まわりには一切そんな素振りは見せず、渚は学校から少し離れた場所で瞬間移動する。


着いた家も一人きりで、とても寂しいものだった。


鞄を置き、今日の夕食をどうするか考えるべく冷蔵庫を開ける。


中にはほとんど何も入っていなかった。


ケチャップやドレッシングといった類いの物と、少量の野菜。


それと、酒の缶。


「あ……」


いつかチルドレンたちと一緒にここへ遊びに来た賢木が持ち帰り忘れたものだ。


しかし、この食材では何も作ることができない。


買い物に行かなければならないのかと思いながら冷蔵庫を閉め、渚は出掛ける用意をし始めた。


服を替え、脱いだ制服をハンガーにかける。


そして鞄に財布を入れ、準備を整え玄関に向かう。


靴に足を差し込むと、それと同時にインターホンが鳴った。


「…っ……」


もしかしたら京介さんかもしれない。


能力を使って確認をとらなかった渚は、期待に胸を膨らませて勢いよく扉を開けた。




「お、こんなに早く出てくるとは思わなかったぜ。」


扉の前に立っていたのは賢木だった。


白衣ではなく私服を身に纏っている彼は、渚の姿をまじまじと見つめる。


「何処か行くつもりだったのか?」


「っ、うん。その、買い物にね。」


兵部ではなかったということにより、少しショックを受けた渚は反応が遅れた。


「修兄こそどうしたの?ここに来るなんて珍しいよね。」


誤魔化すように話を変えれば、賢木はその質問に微笑んで返す。


「編入祝いをするって言ってただろ?もうだいぶ経つし、皆本たちとは予定が合わなかったから俺だけでもと思ってな。」


忙しいなら帰るけど、と付け加えた彼を慌てて引き留める。


「そんなことないよ、ありがとう!でも買い物に行かないと何もなくて…」


「ちょうど今行くところだったのか。じゃあ一緒に行こうぜ。」


「でも…」


「ここで俺だけ待ってるわけにもいかねーし、一緒に買い物ってのも楽しそうだろ。」


そう言って賢木はエレベーターへと向かう。


渚は少し後ろから彼を追いかけた。




下には賢木の車が停められていた。


「たまにはドライブも悪くないだろ?」


彼は渚を助手席に乗せる。


そして自分も運転席側に乗り、エンジンをかけた。


それほど遠くないため移動時間は短く、彼らはすぐに目的地へと着いた。



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