Long

□16th
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「おはよう。」


「おはよう。今日は早いんだね。」


「そうかい?」


いつものように、兵部は渚を迎えに来た。


だが、いつもより早い。


「うん、30分くらい。」


彼女がそう答えると、兵部は時計を見て納得したようだ。


「ホントだ。」


「何かあったの?」


「いいや、別に。」


何でもないよと答えてはいるが、その表情には疲れが見てとれる。


「…最近疲れてるみたいだけど、無理しないでね。」


何をしているのかは知らないが、誰が見ても疲れきっている。


「あ、あぁ。ありがとう。でも本当に何もないんだ。」


「そう?ならいいけど…」


本人がそう言うならこちらは何もできないが、やはり心配だと渚は眉を潜めた。


「…準備ができたら言ってくれ。」


ソファに座り、兵部は彼女に言う。


「ありがとう。すぐ終わるから。」


待たせては悪いと、彼女は急いで用意した。


「慌てなくても大丈夫だよ。」


「うん、ありがとう。」


「…慌てなくていいって……」


そうはいっても早くしようと思うものではないだろうか。


朝食の後片付けをし、制服に着替える。


それですべての準備が完了した。


「ほら、あと15分もある。」


「たまには早く行くのもいいよ。雰囲気も違うかもしれないし。」


「…そうだね。じゃあ行こうか。」


靴を履き、完全に行く体制を整える。


渚の様子を確認し、兵部はいつものように彼女をつれて瞬間移動した。






予想通り、いつもより早い時刻の学校は雰囲気が違った。


人が少なく新鮮に見える。


「じゃあ僕は行くよ。授業頑張って。」


「うん、いってきます。」



それでも彼らのやり取りは変わらない。


「京介さんもいってらっしゃい。」


言って渚が手を振ると、兵部も同じように振り返す。


そして微笑んで、瞬間移動してしまった。



彼の姿を見送り、彼女も校舎へと向かう。


そして昇降口でスリッパに履き替え、教室までの廊下を歩く。


このパターンにもだいぶ慣れてきた。


本当に編入したての頃と同じ廊下なのだろうかと思うくらいだ。



ふと後ろを振り返る。


それとほぼ同時に携帯が鳴った。



「局、長…?」


ディスプレイを見て少し疑問に思いながらも、渚は通話ボタンを押す。


「はい。」


「渚クン!今すぐ局長室に来てくれたまえ!!」


「え………あっ、ど…」


どうかしたのか。


そう聞こうとしたが、一方的に話しかけられて勝手に切れてしまった。


思わず溜め息が出る。


「…仕方ない。」


幸い、今日は早く来たおかげで人通りも少ない。



せっかく来たのにと少しだけ文句を言って、渚は誰もいないところで瞬間移動した。



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