Long

□15th
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「じゃあまた明日ー。」


「うん、バイバイ。」


話して仲良くなった友達と別れ、渚は教室を出た。


今日の夕食は何にしようか。


そんなことを考えながら階段を降りて昇降口へ向かう。



「そういえば、京介さんどうするのかな…」


ふと疑問に思ったことを口にした。



先日は歩いているところで急に拐われる感じだったが、今回はどうするのか。


朝のようにするのは少し難しい気もする。


考えながら歩いていると、彼女は校門近くが騒がしいことに気付いた。


一体何があるのだろうか。


だが自分には関係ないのだろうと、渚は気にしないことにした。



もしかしたら兵部は忙しくて来ないかもしれない。


それはそれで残念だけど、その方が迷惑をかけなくてすむ分気は楽だ。



何処で瞬間移動しようかと考えながら、人だかりを避け校門を出る。



「その必要はないんじゃないのかい?」


後ろから聞こえた声。


その声に、渚は立ち止まった。


振り返れば、校門横の壁にもたれ掛かっている兵部の姿が見える。


人だかりはこの人物が原因だったのだ。


彼が歩く姿を追って、人々の視線も動く。


徐々に動くそれは、ついに渚と兵部、両方の姿を捉えた。


「行くよ。」


そう言って、彼は渚の肩に手を置いて瞬間移動した。






着いたのは彼女の家。


靴は部屋に着地する前に瞬間移動させて、代わりにスリッパを履かせたようだ。


なんとも器用な技だと感心する。


「おかえり。」


「ただいま。」


このやり取りにもだいぶ慣れてきた。


言葉を返すと兵部は微笑んでくれたが、少しすると何か思い出したように眉間に皺を寄せた。


「どうかした?」


「…僕を置いて帰ろうとするなんて、ちょっと酷いんじゃないかい?」


「…っ………」



別に置いていこうとしたわけではない。


ただ、どうすればいいかわからなかっただけなのだ。


彼女の思考とは反対に、彼は拗ねた顔をする。


「迎えに行くって言ったじゃないか。」


「…ごめんなさい。」



暫しの沈黙。


「…まだ、迷惑かけるとか思ってるのかい?」


図星を突かれ、渚は俯く。


そう思うのは当然なのではないだろうか。


兵部にだってやることはたくさんあるのに、自分のせいでその大切な時間を割いてしまうのだ。


隣人でも同じエスパーの仲間でも、やはり気が引ける。


「………っ!」


突然、兵部が渚の顎を掬うように持ち上げた。


「キミの考えてることくらいわかる。でも、僕が好きでやっているということもわかってほしい。」


語るように、教え込むようにゆっくりと話す。


「キミが迷惑かもしれないと思うこと自体が、迷惑をかけることになる。こう言えば、キミはそんな心配をしなくなるのかい?」


「でも……」


「前にも言ったけど、僕らは同じエスパーの仲間だ。僕はそんな渚に親近感を感じる。」


兵部の手が、渚の頬を撫でた。


「世話を焼きたい。だから、甘えてくれないかい?」


何と言えばいいのだろうか。


家族でもない、友達とは少し違う不思議な関係。


だが、甘えてもいいと思えた気がした。



「キミは今まで誰にも頼らず何事にも耐えてきた。そろそろ、頼ってもいい頃だ。」


その言葉を聞いて、兵部の姿を映した渚の瞳が僅かに揺れる。



優しく笑う彼に、渚は自然と笑みを返していた。



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