Long

□14th
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「ここさ。」



足を止めたのはただのショッピングモール。



「ここ…?」


「そうだよ。不満かい?」

「っ、そうじゃなくて…」


兵部はもっとすごいところに行ってそうなイメージがあったために驚いたのだ。


「京介さんでもこういうところ来るんだなって…」


「変かい?」


「そうじゃないけど…」



先程と同じように否定する。


「デートするならこういうところの方がいいと思ってね。」


「…そうなの?」


「色々な店があるから、好きなところにすぐ行けるだろ?手軽に楽しめる。」


それに今日は買い物がメインだしねと彼は付け加えた。



「そっか…考えたことなかった。デートなんてしたことないし…」


「じゃあ是非とも楽しませないとね。」


そう言って兵部はまた歩き出す。


「まずはお昼ご飯かな。」




――――――――…



「うわぁ、美味しい…」


「それはよかった。」



入ったのはイタリアン料理の店。


パスタは自分で作ったりもするが、こんなに美味しくできたことはない。


さすがプロだと渚は感心した。



「僕は前に渚が作ってくれたカルボナーラの方が好きだけどなぁ…」


「そんなことないよ、絶対こっちの方が美味しいから!」



「じゃあ食べてみるかい?」


「え……んむッ」


少量のパスタを絡めたフォークを、口を開いた瞬間に入れられる。


「どうだい?」



「…こっちの方が美味しいよ。」


「そうかな…まぁ謙遜もあるだろうし、そういうことにしておくよ。」



そして兵部はまた食べ始めた。


渚もチラチラと彼の方を見ながら食べ始める。


さっきの行動のせいで意識してしまう。


「…そんなに見ないでくれるかい?……照れる。」


「ッ…ごめん!」



そう言われ、彼女は慌てて視線を皿へと落とした。


考えてみれば、食べてるところを見られるなんていい気分がしない。



取り消すようにパクパクと食べ出すと、兵部がクスッと笑った。



「そんなに慌てて食べると喉に詰まるぜ?」


「…う、うん。」


返事をして食べる速度を落とすと、今度はニコッと笑った。



彼はいつのまにか食べ終わってる。



「ごめん…」


「気にしないで。ゆっくり味わいなよ。」



そう言われてもやはり気にするのが一般的な人ではないだろうか。


渚は気づかれない程度に速度をあげて食べた。



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