Long

□14th
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こんな感じでいいのだろうか。


鏡を見て渚は溜め息を吐いた。


いつも会っている人なのに、デートという言葉ひとつでとても緊張する。


兵部は一緒に出掛けるだけだと言っていたが、彼女からすれば曖昧な答えで逆に不安が募った。


「なんだかなぁ…」


そう呟いたのとほぼ同時に玄関のインターホンが鳴る。



「はい!」


渚が慌てて出ていくと、そこに立っていたのはやはり兵部だった。


「駄目だろ、相手も確認せずドアを開けちゃ。不審者だったらどうするつもりだったんだい?」


「だ、大丈夫だよ!」


第一声が説教じみた言葉で少し反抗的な態度になってしまったが、彼女は何かが違うことに気付いた。



「京介さん、服…!」


「あぁ、これかい?」


いつも学生服を着ている兵部が私服を着ている。


「デートなんだし、こういう格好の方がいいと思ったんだけど…変かい?」


「ううん、そんなことないよ!」


渚は首を大きく振って否定した。



「ありがとう。用意ができてるなら行くけど、大丈夫かい?」


「あ、うん。行こっか。」


しっかりとサンダルを履き、外に出る。


オートロックのため鍵をかける必要はない。



歩き出す兵部についていくように、渚は半歩後ろを歩く。



エレベーターで下に降り、街へ出た。


「はぐれるなよ。」


「わっ…」


手首を捕まれ、半ば強制的に隣を歩かされる。




「ねぇ、何処に行くの?」

「いいところさ。」


「…?」


ニコニコしながら答えた兵部は、その先まで教えてくれなかった。



マンションから離れるにつれ人が多くなっていく。


手首をつかんでいた手は、いつの間にか渚の手を握っていた。



少しだけ握り返してみると、彼が笑顔になった気がする。


ほとんど表情が変わってないからわからないが。



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