Long

□12th
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髪を拭きながら出てくると、兵部がソファーに座ったまま寝ているのが見えた。



疲れていたのか、遅い時間に邪魔したことを渚は申し訳なく思った。


「ごめんなさい…」


近付き、傍にあったブランケットを取って兵部にかける。


「…渚……」


「へ…?うわっ!?」



突然腕を引っ張られて抱き込まれた彼女は、そのまま兵部の脚の間に座る形になった。


後ろから兵部が彼女の首元に顔を埋める。



「京介さん…?」


「………」



また無視を極め込む。


この人はいつもそうだと彼女は少し怒ったように溜め息をついた。


昨日もだったが、何かあると絶対に喋らない。


寂しがりなのかもしれないが、それでも何かあるなら言ってほしい。


「京介さん。」


「…………」



そう思うのに、何も言わない彼に対して同じように何も言えない自分がいることに気付いた。


何も言わなくても、こうして自分に甘えてくれる彼に不思議な安堵感を覚える。



「……すまない。」



やはり謝るだけの兵部。



「いいよ。あ、そうだ…」

「ん?どうかしたかい?」


いつもの彼に戻った。


ならば話すべきだろう。



「明日ね、私の部屋にやっと修理の人が来てくれるんだって。」


「……!」


彼女が話すと、驚いたようで目を見開く兵部。


だがすぐにいつもどおりの優しい笑顔に戻った。


しかし、その表情はどこか寂しそうに見える。


「よかったじゃないか。」


「今までお世話になりました。」


「そんなに畏まらなくてもいいよ。あぁでも、僕はこれからも渚の傍を彷徨くけどいいかい?」


きっと駄目だなんて欠片も思ってないだろう。


それにしては妙に自信がないようにも見えるが。


「勿論。これからもよろしくね。」


渚が笑って言うと、彼もつられたように笑った。


「あぁ、よろしく。」





そのまま2人は話し込み、気付けば日付が変わっていた。


お互い明日の生活に支障が出るということで、今日はこの辺でと別れる。


正確には渚が自分の部屋に瞬間移動で戻ったということだ。



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