Long

□3rd
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「おぉ、渚!」


「修兄!」


医療研究課には、ESPドクターの賢木修二が居た。


少し訳あって渚は“修兄”と呼んでいる。


「じゃ、検査服に着替えてくれ。」


「はーい。」



検査服を受け取り、着替えに行く。



「あ、覗いちゃ駄目だよ。」


「覗かねーよ。」




―――――――…


「そーいえばお前、引っ越すのか?」


「…何で知ってるの?」



「いや、ちょっとな。」



その“ちょっと”が解らないのだが。


しかし彼女のことがバベル内の親しい人に知られるのはいつものこと。


特に気にしているわけではない。



会話を楽しみながら、脳に異常がないか、身体に変な負担がかかってないかなど様々な検査が行われる。



「じゃあ、最後にESP超度計るぞ。」



「計らなくていいのに…」


「計れって、局長から言われてんの。」



渋々ながらも、渚は沢山の器具をつける。


「質問するぞ。」


「…………」



返事をしない渚を見て困ったような笑みを浮かべた賢木は、仕方なくそのまま質問した。



彼の質問に対し、思ったことを正直に告げる。


すると、渚に繋がれている機械が大きな音を出し始めた。


その音は鳴り止まず、だんだん危険そうなものに変わっていく。


そしてしばらくすると、さらに大きな音をたてて検査器具は壊れてしまった。




「ごめん…」



「渚が気にすることじゃねーよ。…にしても、やっぱスゲーな渚は。」


壊れた器具と彼女を交互に見つめ、賢木は小さく笑う。



世の中に超度7以上は存在しない。


それ以上は計測できないからだ。


だが渚は違う。


彼女の超度は7という数字では収まりきらず、機械はしばらく7を示してやがて壊れる。



「これで今日の検査は終わりだ。新しい家まで送ってやろうか?」


「仕事は?」


「今日はこれだけだ。」


「…道覚えたいから、今日はいいよ。歩いていく。」


「そうか。」



賢木に別れを告げ、彼女は医療研究課を出る。


その姿を彼はしばらく見つめた。





局長室には行く必要が無いため、着替えを済ませてそのままバベルを出る。


超能力は一切使わず、新しい家まで渚は歩いた。




「ここか…」



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