Long

□2nd
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おそらく彼はエスパーなのだろう。



渚には自分で瞬間移動した覚えがない。



隣を見れば、彼は空を見上げている。



「…ここで、何してらっしゃるんですか?」



彼女は静かに聞いた。



「ん? あぁ。ちょっと考え事をしていてね。」



彼は嫌がらずに答えた。



悪い人ではなさそうだ。


もう少し訊いてみようかと思い、渚はまた口を開く。


「あの、あなたはこのマンションに住んでいらっしゃるんですか?」



「いや…僕はここの住人じゃないよ。」


「そうですか…」



何故だか解らないが、渚はこの人物と話がしたいと思った。


「あの…」



「ごめん。僕はもう行かなきゃいけないんだ。」



「っ!…すみません。」



「謝る必要はないよ。じゃあまたね。」



そう言うと、彼は消えてしまった。



渚はそのまま彼の座っていた場所を見つめている。


同じエスパーだからだろうか、彼のことが気になる。


彼の表情は寂しそうだったが、どこか楽しそうにも見えた。



初めて会った人がこんなに気になるなんてどうかしている。



「…帰ろ。」


色々な疑問を抱えたまま、渚は自分の部屋へ戻った。



引越しの準備をする為に。



「…それにしても、“またね”なんて言葉を全然知らない人に使うなんて……」


変な人。


小さく呟き、渚は彼のことを考えるのをやめた。



To be continued.
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