Long
□36th
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朝起きると、隣で渚が眠っていた。
ああ、そうか、昨日彼女に誘われて泊まったんだった。
穏やかに眠る彼女を見て、改めて昨日ちゃんと話し合えてよかったと思う。
こんなにも幸せだ。
兵部は渚の頬にそっとキスを落とすと、数日前から決めていたことを実行するため起き上がった。
「え、お出掛け?」
「あぁ。そんなに時間もかからないからお昼頃には戻ってくる予定だけどね。」
「そう…」
久々に兵部と過ごせると思った渚は少し落胆した。
だが自分も1週間程いなかった手前、行ってほしくないとは言えない。
「お仕事?」
「いや、今回は私用さ。」
なるべく早く帰ってくるよと言った兵部は、渚を軽く抱き締めて出ていった。
「………」
私用って何だろう。
プライベートなことだから聞かなかったが、やはり気になる。
「お昼頃に帰ってくるならそう長い間出掛けてるわけでもないし、話さなかったってことは大したことでもないのかもしれないけど…」
自分を落ち着かせるために独り言を呟いてみたが、逆効果だった。
「うー…」
何かしていないとつい考えてしまう。
そう思った渚は、なるべく兵部のことは考えないようにするため本を読むことに決めた。
***
「うーん…」
局長室にある大きなモニターで、桐壺はある映像を見ていた。
スピーカーから流れてくるのは子供の合唱。
彼が見ているのはザ・チルドレンの卒業式を撮ったものだった。
「局長、いつまでそれを見るおつもりですか?」
「もうちょっとだけ!今いいところだから!」
「………」
しなければならないことはたくさんあるのに、と柏木は溜め息つく。
呆れ顔で桐壺の後ろ姿を見ていた彼女は、しばらくするとぽつりと呟いた。
「…そういえば、渚ちゃん大丈夫かしら。」
1週間ほど、バベルにある自室から出てこなかった彼女。
書類も、こんな形ですみませんという付箋付きのものが瞬間移動で送られてきていた。
昨日と今日は出動要請がない限り休みだが、何かあったのかと心配になる。
「あの子も随分根詰めてたから心配だネ…」
聞こえていたのか、桐壺は柏木の独り言に言葉を返した。
「…そうだ、渚クンのも見よう。」
「あ、ちょっと…!」
「DVDっていうのは便利だネ。巻き戻さなくてもすぐに前のが見られるヨ。」
小学校の卒業式でひとしきり感動泣きした彼は、高校の卒業式の映像を見出す。
こちらはあまり感動的ではないが、小さい頃から育ててきた子が成長したのを感じさせられるとやはり感慨深かった。
「桐壺クン、ちょっといいかしら?」
「あら、管理官。」
諦めた柏木と2人で映像を見ていると、蕾見がやって来た。
「何?また見てるの?」
「えぇ、今度は渚ちゃんの分も。」
真剣に見入って話を聞いていない桐壺の代わりに柏木が答えていく。
「ふーん、私も見ようかしら。」
なんとなく言ってみた蕾見だったが、モニターに視線を移すと急に顔色を変えて叫んだ。
「っ、ちょっと!今のところ止めて!!」
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