Long

□34th
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「……それで、一方的に怒って喧嘩になったと。」


「まあ、そんなところだ。」


大体の事情を兵部の口から聞き出した賢木は、呆れ気味に溜め息をついた。


「そりゃお前が悪いわな。」


「…暴走しすぎたとは思ってる。キミたちの仲がいいことも、よく知ってる。」


本当に、些細なことだったんだと今になって思う。


小さな嫉妬が生んだ、大きな事件。


本当に悔やんでいる様子の兵部は、下を向いたまま顔をあげない。


それを見た賢木は、また溜め息をついた。


「…お前、自分には敬語のままでよそよそしいっつったよな。」


「…………」


「渚がそうなった理由、知ってるか?」


そこでようやく兵部は顔をあげる。


ようやく反応した兵部に賢木はフッと笑い、彼女についてゆっくり語り出した。


彼が言うには、昔は渚もなかなか積極的だったそうだ。


だが、ある期間を境にそうではなくなったらしい。


「それが、俺がコメリカに行ってた期間だ。」


「…………」


「せっかく打ち解けられたのに、すぐ別れて4年近く会えなかったからな…あいつの中で、失う恐怖みたいなのが芽生えたんだと思う。」


あくまで憶測だけどな、と賢木は付け加える。


「俺は一応最初に仲良くなった奴だから、こうして今でも壁を作らず接せられるんだろうが…」


特別だと思っているからこそ、どうしてもそうなってしまうんだろう。


「……僕は、彼女を手放す気も、彼女から離れる気もない。」


「わかってる。だがそれをあいつが完全に信用しない限り、また今回みたいなのを繰り返すだけだ。」


「…………」


「つーか、居場所なら接触感応やら精神感応でわかるんじゃねーのか?」


「彼女は無意識下で自分の情報にプロテクトをかけることができる。傷ついたときや怒っているとき、彼女に精神系の超能力は効かない。」


その話を聞き、賢木ははじめて知ったらしく感心したように兵部を見た。


そして、俺よりも渚の能力をよく知っているじゃないかと、小さく呟く。


「そういうキミは、渚ついて、あんなに簡単に話してよかったのかい?」


「大丈夫だろ。あくまで憶測だ。」


それに…と賢木は続ける。


「渚が幸せになれば何でもいいんだ。」


「キミ…」


「いや、俺のはあくまで兄妹の延長だ。1人に固執したことがなかったからそういう風に錯覚してるってのもあるけどな。」


「………」


あいつには言うなよと最後に告げた賢木に、兵部はただ頷くしかできなかった。



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