Long

□30th
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少しもやもやとした気分でも、同じように次の朝が来る。


渚はいつも同じ時刻に鳴る目覚ましを止め、窓を見た。


カーテンがかかっているが、隙間から漏れてくる光からおそらく今日が晴れなのだろうとわかる。


早く起きて支度をしなければ。


渚は体を起こすと準備を始める。


ぼーっとしてしまうことが多く常よりも時間がかかったが、それでもちゃんとすべて終えることはできた。


「ふぅ…」


今日から最後の週の学校が始まる。


制服をきっちりと着た彼女は、携帯電話に手を伸ばした。


“おはようございます。学校、いってきますね。”


それらしい絵文字もつけて、メールを送る。


宛先はもちろん兵部だ。


会うことは叶わないが、それでもこうして今の状態を知らせたり意思の疎通をすることはできる。


「いってきます、京介さん。」


返事が来ないのはわかっていながら、それでも彼にそう伝えることに意味があるのだと、渚は誰もいない空間でそう呟いた。


***


学生服のポケットに入っている携帯が振動した。


真夜中である今、いったい誰がと兵部は眉間に皺を寄せる。


だが届いたメールの差出人を見て、その表情は情けないものとなった。


「っ、そうか、向こうはもう朝か…」


きっと、寂しい思いをさせているんだろう。


気が休める時は度々来るが、いつ動かなければならなくなるかわからないためそう何度も向こうへはいけない。


だが、気持ちが通じてまだ間もない今の時期、あまり一人にしてしまうのはよくないだろう。


彼女のことだ、無理して明るくしてこちらに気を遣うくらい目に見えている。


人一倍独りに敏感で、不安を感じているのに。


「渚…」


次に会いに行ってやれるのはいつだろうか。


否、彼女がまだ大丈夫でもこちらが危うい。


先日会ったばかりなのにもう会いたいと思ってしまう。


いつ会いに行けるのだろう。


「…あと1時間か。」


真木が兵部を半強制的に休ませ、2時間ほど眠れと言った。


随分働き詰めで、本当ならば彼も休むべきだろうに。


「…………」


“おはよう。いってらっしゃい。”


絵文字もつけて、渚に返信する。


「いってらっしゃい、渚。」


眠って、回復して、早く終わらせてしまおう。


兵部はそう決心して仮眠をとるべく目を閉じた。



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