Long
□29th
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書類もあとは実際に作ってみるだけとなり、賢木はもう帰ってもいいだろうと言った。
「局長も説明したらそれでいいって言ってたしな。」
「忙しかったのにごめんね。」
「いいって。もともと入ってた仕事だって言っただろ?」
「そうだったね。」
穏やかな空気を纏い2人は笑い合う。
「じゃあ気を付けて帰れよ。」
「一瞬なのに気を付けることなんかないよ。」
「それもそうだな。」
未だ笑っている賢木に別れを告げると、渚は瞬間移動で自宅へ戻った。
室内には誰もおらず、静かな空間が広がっていた。
ここにいないということは、恐らく兵部はまだ帰ってきていないのだろう。
彼は自分の部屋よりもこちらにいる方が多いし、出掛けたのなら帰ってきてすぐこちらに来る。
案の定、テーブルには1枚のメモが置いてあった。
“今日は帰れそうにないから夕飯は一人で食べて。”
謝罪の言葉と共に書かれたそれを見て、彼らしいと苦笑する。
渚は寂しさを押し込め、夕食の準備を始めた。
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