Long

□27th
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「おかえり。」


家に帰れば、すでに兵部が来ていて渚を出迎えた。


「ただいま。」


彼女は微笑み彼に返す。


「楽しかったかい?」


「はい。」


これもいつものパターンで、ここ2週間ほど毎日繰り返される問答だった。


ただ今日は、いつもより少し渚の笑みが濃い。


「それはよかった。」


何か友人といいことでもあったのだろう。


兵部はその事に関し、然して深くは追求しなかった。


「そうだ、渚。」


「はい。」


「今日は気分を変えて外食しないかい?」


突然された兵部からの提案。


「たまには、と思ってね。そんな堅苦しい店じゃなくて、高校生らしくファーストフードを考えてたんだけど…」


ダメかな?と言う兵部に、渚は少し答えるのを躊躇った。


「はい、京介さんとでしたらどこでもいいんですが、ただ…」


「ただ?」


「…誰かに見られても、大丈夫なんですか?」


街に出れば、たくさんの人がいる。


その中にはバベルの職員も当然いるだろう。


もし彼らに見つかれば、兵部が危ないのではないか。


そう心配せずにはいられなくて、渚は答えるのを渋ったのだ。


だがそんな渚を見て、兵部はクスリと笑う。


「心配ないよ。連中は僕を探すために外に出てるわけじゃないんだ。余程のことがない限り見つからないさ。」


「でも…」


「それに、そんなことを言い出したら僕は生きていることさえ罪になる。キミは、僕の存在を罪だと思うかい?」


その言葉に、渚は激しく首を横に振った。


「心配してくれるのはありがたいけど、僕は渚と出掛けたいんだ。僕の細やかな楽しみを奪わないでくれよ。」


「…………」


そう言われてしまえば返す言葉もなく、渚はただ不安げに兵部を見た。


「何と言われても、昼間一人で外出してることもあるし、今回はそれに渚が同伴してるってだけで状況は普段と変わらないよ。」


まぁ個人の心情的には大きな差があるけどね。


その言葉を心の中で呟いた兵部は、未だに不安そうな渚をそっと抱き締める。


「催眠能力で姿を変えればいいし、そんなに心配しなくても大丈夫だよ。」


「そう、ですね…」


抱き締められながら彼の言葉を肯定すると、途端に自分の中に安心感が湧いたのを渚は感じた。


何故そんなに不安だったのかと逆に問いたくなるほどだ。


「よし、決まりだね。」



そう兵部が言ってもしばらくは2人とも動かず、抱き合っている時間が続く。


数十秒後体を離すと、2人は互いに微笑んで、各自出掛けるための準備を始めた。



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