Long
□26th
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「……ふぅ。」
任務を終え桐壺に報告した渚は、廊下を歩いていた。
そこまで予知変動超度の高くない仕事だったため疲れてはいないが、少々汗をかいた。
軽くシャワーを浴びてから帰ろう。
渚は心の中で呟いてシャワールームへ向かった。
シャワーを浴びながら、渚はふと兵部を思い浮かべ微笑んだ。
以前、ここを使うと誰かに自宅のシャワーが使えないことがバレてしまうからと、彼に助けを求めたのを思い出したのだ。
いくらここに来たくなかったとはいえ、随分無茶なことをお願いしたなと苦笑する。
それと同時に、その時兵部にお願いされたことを思い出した。
結局その約束は今はもう守られてはおらず、自分の我が儘を聞いてもらっている。
「だって、1つでも年上じゃ…」
年下や同い年なら構わなくとも、年上だとどうしてもそれが叶わない。
そうなってしまった経緯まで思い出そうとしたとき、自分が思いの外長くシャワーを浴びていることに気づいた。
渚は考えることを放棄し水分を拭き取る。
そして衣服を身に纏ってその場をあとにした。
何となくバベル内を散策したくなって、1階にある出口まで歩いていく。
「あれ、渚?」
だがエレベーターまでの長い廊下を歩いていると、突然反対側から来た人物に声をかけられた。
「あ、修兄。」
彼は白衣のポケットに手を突っ込んだまま、渚に向かって歩いてくる。
「任務の帰りか?」
「うん。修兄は?」
「俺は局長に書類届けてきたとこ。」
そう言って賢木は肩を竦めた。
「そうだ、渚。このあと時間あるか?」
「あるけど…どうかした?」
「いや、ちょっとな…」
彼にしては珍しく、言葉を濁している。
賢木は一度不安げに渚を見ると、小さく笑んでそのまま歩き出す。
渚は彼の行動に疑問を抱きつつも、黙って彼についていった。
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