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□●迷惑じゃないから
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「ってわけで、沙樹に赤ちゃんができたから、みんな優しくするように。」


夕食時、京介はみんなに言った。


みんな驚いているが、無理もない。


いきなりそんなこと言われれば、誰だって驚くに決まっている。


でも紅葉だけはこちらを見て笑ってくれていた。


「マジかよ…」


「そんなに驚くことかい?」


京介が葉に訊ねる。


「いや、別に沙樹に子供ができたこと自体にはあんま驚いてねーんですけど…」


葉はそこまで言って京介から目を逸らす。



「ボスでも出来るんだーって思って…」



「なっ…!」


彼の台詞に京介は真っ赤になった。


「あ、当たり前だろ!」


「だって、80越えて…」


「実年齢はそうでも、細胞は10代と同じだ!」



必死になって言う京介。



そういえば、真木ちゃんはどうしたのだろうか。


「真木ちゃん…?」


呼び掛けてみたが、彼が動くことはなかった。


そんなにショックを受けたのか。


逆にこっちがショックを受けた。



「とにかく、そういうわけだから沙樹にあんまり無理させるなよ。」


葉との言い合いを終えた京介は、少し疲れた様子でみんなに言った。


そしてそれが解散の合図となった。





私は京介と一緒に彼の部屋へ行く。



「転ぶなよ。」


「大丈夫だよ……うわ!」


言った傍から私は転びそうになった。



「ッ!大丈夫か!?」


京介に支えられたおかげで転ばずにすんだみたい。


「大丈夫、大丈夫。」



「…あんまり心配させないでくれよ。」


「…う、うん。」



精神感応なんか、なくてもわかる。


この人は本当に私を心配してくれるんだ。



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