Long

□18th
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「っ…あれ、なんか…」


「どうした?」


肩を少し震わせた薫に皆本が問いかけた。


「今、何か感じなかった?」


「いや、特には…」


否定の言葉を口にして、皆本は薫を見る。


「ッ、皆本さん、あれ!」


珍しく紫穂が切羽詰まったように叫んだ。


振り返り、彼女が見ている方を皆本も見る。


視線の先には渚と敵。


だが、何か様子がおかしいことに気が付いた。


「やっぱり、行った方がいいんじゃない?」


不安そうな表情で、紫穂は皆本を見上げる。



「…そうだな。葵、頼めるか?」


皆本は頷き、指示を出した。



「行くで…!」


葵はまわりを一度見て確認する。


そして全員を瞬間移動させた。









こちらに着いた瞬間、チルドレンの3人は体に違和感を感じた。


ECMにより超能力が使えなくなったのだ。



先程までいたところはここから離れていたため使えたようだが、今は全く力が出せない。



「ECM…普通の人々か!?」


「っ…、渚ちゃん!」


その中で、渚を見つけた薫は無事を確認するため彼女の名を呼んだ。


そしてすぐさま駆け寄り触れようとする。



「うあッ…!」


しかしそれは叶わず、彼女は後方へと弾かれてしまった。


渚のまわりに見える、薄い壁のようなものによって。



「大丈夫か薫!?」


「なんで……」


弾かれた薫を受け止めた皆本は問いかけるが、彼女は気付かず渚を見続けていた。


「なんで、超能力使ってんの…?」



何かをブツブツと呟きながら、彼女の体はどんどん上昇していく。


ECMが使われている今、それはあり得ない事態だ。


敵も全員、そのあり得ない事態に目を見張っている。



「あれは…!」


まわりと同じように渚を見た皆本は、そこであることに気が付いた。


今の状態によく似た光景を以前目にしたことがある。


「あの時と同じだ……」


薫が暴走した時や初めて桃太郎に出会った時、それと同じなのだと彼は言った。


背中を嫌な汗が伝う。


以前とは違い今はECMが働いているため、彼女を別の場所へ瞬間移動させることができない。


さらに渚は我を忘れ、精神状態も正常ではないのだ。



「渚ちゃん…」


何故このような事態になったのかわからない彼らは、ただ渚を見ているしかなかった。



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