Long

□13th
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「修兄!」



医療研究課に着くと渚は勢いよく扉を開けて彼を呼んだ。


「ん、どうした?」



患者はいなかったらしく、ソファに座って寛ぐ姿が見られる。


彼女は傍へ駆けつけ隣に座った。


「私、学校に行けるんだって!」


「…!」


「局長や管理官が頑張ってくれたみたいでね。明日から行くことになってるの!」


話すと余計に嬉しくなってきて興奮する彼女に、賢木は柔らかい笑顔を向けて頭を撫でた。



「よかったな。行って自分のやりたいようにやってこい。」


「うん!」


「みんなでお祝いするか?」


「え、いや…」



確かに嬉しいが、ニヤリと笑って言う彼に、そこまでしなくてもいいんじゃないかと断ろうとする。



「初登校なんだ、入学式みたいなもんじゃねーか。そのくらいやってもいいだろ。」


「でも…」


「俺が祝いたいんだよ。」


その言葉は最早反則なのではないだろうか。


やりたいのだと言われてしまえば何も返せないことを彼は知っている。



「じゃあ決まりだな。いつになるかわからねーけど、なるべく早くやろうぜ。」

「ありがとう。」



「じゃ、明日のために早く帰って準備して寝なきゃな。頑張れよ。」





そして賢木とも別れ自宅に帰り、柏木にもらった紙袋の中身を確認した。


教科書とノート、制服や鞄や生徒手帳。



まだ昼間で、明日家を出るまで随分と時間があるのにすごくワクワクしている。


小さい子みたいだと渚は苦笑した。


それでも彼女には初めてのことで、楽しみなのも無理はない。




「渚、帰ってきてたのかい?」


「わ、京介さん!」



突然現れた彼に驚いて、声がひっくり返ってしまった。


「おかえり。ん、学校かい?」


「あ、うん。明日から行けるらしいの。」


「よかったね、楽しんでおいで。」



そういえば、彼には今まで学校に行ってなかったことも、特務エスパーだということも話してない。



着ていた服で特務エスパーだとは知ってたのかもしれないが、学校に行ってなかったことについて不思議に思われなかったことには驚いた。



「超度が高いと学校側から拒否されたりするけど、渚なら大丈夫だ。」


「それってどういう意味?」


「キミなら自己管理もできてるから問題は起きないだろうってことさ。」



兵部は笑って言った。


渚もつられて笑う。


「ねぇ、京介さんは学校行ってないの?」


前から気になっていたことで、丁度話の流れとしても悪くはないと思い聞いてみたが、もし超度の関係で行っていないのであればものすごく失礼だとあとから後悔した。



やってしまったと少し俯いたが、兵部はそのまま笑顔彼女を見ている。



「内緒だよ。渚はどう思う?」



「え、えーと…」



質問に質問されて戸惑う。


「まぁいい、そのうちわかるから楽しみにしておきな。」


じゃあまたね、と言って彼はそのまま消えてしまった。



「………」



その場に残された渚も明日の準備に取りかかる。



しかし兵部の行方が気になった彼女は、帰ってきたときほどはしゃいではいなかった。



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