Long
□10th
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「遅かったね。任務かい?」
「あ、うん…」
兵部が部屋に来ているのはいつものことだが、今日の彼は何処か違う。
夕飯を用意して、暖かく迎えてくれるなんて。
すごく嬉しいのに、渚は何故か素直に喜ぶことができなかった。
「疲れてるだろ?君のために作ったんだけど、食べられるかい?」
「ッ、ありがとう。いただきます。」
「じゃあ早く手を洗っておいで。待ってるから。」
彼に促されて手を洗いに行く。
気のせいだったのか。
「いただきます。」
「いただきます。」
2人で夕食を食べる。
もう遅いのに、待っていてくれたのか。
なんだか悪いことをしたと、渚は申し訳ない気分になった。
「ん?口に合わないかい?」
その様子を見て不思議に思ったのか、兵部は彼女に問いかける。
「そんな…!とっても美味しいよ!」
「よかった。」
何でもないとわかった彼は、安心したように笑顔を見せた。
自分以外人が作った料理を自宅で食べるのは、いつ以来だろう。
渚は彼の作った料理を見ながら少し物思いに耽っていた。
「渚。」
「え?」
「少し聞きたいんだけど…」
「何かあった?」
いつもよりも幾分真剣な眼差し。
「…さっきキミと居たのは、賢木修二…かい?」
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