Series

□本当は寂しいのだと
1ページ/7ページ


しばらく、帰れなくなった。



目の前の男が発した言葉。


奈都流は努めて冷静に聞き返す。


「しばらくって、どのくらい…?」


「……約1ヶ月だ。」


少し申し訳なさそうにそう答えた彼に、奈都流は驚き目を見開いた。


長くても1、2週間だと思っていたが、まさか1ヶ月とは。


「そ、そう…」


冷静でいることが若干困難になり、奈都流は短く返事をする。


「すまない、どうしても外せない任務でな…」



普段任務に行っても私情を挟まず仕事をするこの2人は、その性格故同じ任務に就くことが多い。


どうしても公私混同できない2人が辛い思いをしないようにという兵部なりの配慮だった。


一緒にいられれば話さずとも彼らは互いを確認することができる。


だが今回は違った。


真木はパンドラの中でも本当に上位にいる人物だ。


同じ幹部でもその仕事量の差は大きい。


デスクワークも任されるが、彼はこうして単独での任務にも駆り出されるのだ。


「気にしないで、頑張ってきてちょうだい。」


なるべく寂しそうな素振りを見せてはいけない。


奈都流は彼に余計な心配をかけないようにと無理に笑った。




その夜は、真木が断るのを押しきって、荷物整理の手伝いをした。


そして何気ない会話をして風呂に入り、彼の部屋で抱き合って眠った。


次の日の朝は同じ時間に起きて、前日と同じように笑って見送る。


「いってらっしゃい。」


「…あぁ。」


そして手を振って別れた。


任務というより、サラリーマンの出張に近い今回の一件。


このとき奈都流は、暗い気持ちでいてはすぐに滅入ってしまうからと、なるべく真木のことは考えず明るく生活しようと決意した。



それが、1週間前の出来事だ。



.
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ