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□本当は寂しいのだと
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しばらく、帰れなくなった。
目の前の男が発した言葉。
奈都流は努めて冷静に聞き返す。
「しばらくって、どのくらい…?」
「……約1ヶ月だ。」
少し申し訳なさそうにそう答えた彼に、奈都流は驚き目を見開いた。
長くても1、2週間だと思っていたが、まさか1ヶ月とは。
「そ、そう…」
冷静でいることが若干困難になり、奈都流は短く返事をする。
「すまない、どうしても外せない任務でな…」
普段任務に行っても私情を挟まず仕事をするこの2人は、その性格故同じ任務に就くことが多い。
どうしても公私混同できない2人が辛い思いをしないようにという兵部なりの配慮だった。
一緒にいられれば話さずとも彼らは互いを確認することができる。
だが今回は違った。
真木はパンドラの中でも本当に上位にいる人物だ。
同じ幹部でもその仕事量の差は大きい。
デスクワークも任されるが、彼はこうして単独での任務にも駆り出されるのだ。
「気にしないで、頑張ってきてちょうだい。」
なるべく寂しそうな素振りを見せてはいけない。
奈都流は彼に余計な心配をかけないようにと無理に笑った。
その夜は、真木が断るのを押しきって、荷物整理の手伝いをした。
そして何気ない会話をして風呂に入り、彼の部屋で抱き合って眠った。
次の日の朝は同じ時間に起きて、前日と同じように笑って見送る。
「いってらっしゃい。」
「…あぁ。」
そして手を振って別れた。
任務というより、サラリーマンの出張に近い今回の一件。
このとき奈都流は、暗い気持ちでいてはすぐに滅入ってしまうからと、なるべく真木のことは考えず明るく生活しようと決意した。
それが、1週間前の出来事だ。
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