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□貴方に感謝と労りを
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いつものように朝食を作るため早く起きる。


別に真木が当番というわけではないのだが、後のことを考えると自分で作った方が遥かにいい。


当番の者が料理を苦手とする場合、とても食べられそうにない料理を出され、ぐちゃぐちゃになったキッチンの片付けを任されるのだ。


「俺が甘やかすから上達しないんだがな…」


苦手でも、練習させなければ一生上達することはない。


どうやっても自分の手間が増えることは変わらないということがわかり、真木は眉を顰めた。



着替えを済ませ、少し重い足取りでキッチンへ向かう。


すると、ドアの隙間から明かりが漏れているのが見えた。


小さいが、何かカチャカチャという音も聞こえる。


誰かが何かを作っているのだろうか。


こんな時間に?と不審に思いながら、真木はそっとドアを開けた。



「あら、おはよう。早いのね。」


「……何をしている。」


キッチンにいたのは奈都流だった。


しかし何故ここに彼女がいるのか、普段ならまだ眠っているはずだ。


何か眠れないようなことでもあったのだろうか。



心配するように顔を顰めて真木が見れば、奈都流は小さく笑んで彼に答えた。


「朝ごはん作ってるのよ。たまには作ってみようと思ってね。」


「何が…」


「いいから。ほら、司郎は休んでて。」


真木の背中を軽く押し、奈都流は強制的に彼をキッチンから追い出した。


そこにいることのできなくなった真木は、仕方なく隣にあるリビングのソファに座り、少し離れた位置から彼女を見守る。


普段自分が作ったものを奈都流は嬉しそうに食べてくれるが、先に作ろうとしたということは何か不満があったと言うことなのだろうか。


彼女なら言いたいことを隠したりしないと思うが、普段しないことをされるとどこか不安になる。



確か奈都流はそこまで料理が得意ではなかったはずだし、特に好きというわけでもないはずだ。


そんな彼女が料理をするなど、何か理由がなければおかしい。


しかし、そんな理由云々よりも、普段あまり調理器具を使わない奈都流が怪我をしたりしないかどうかの方が真木には心配だった。



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