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□少しは甘えて
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突如、子供の高い叫び声が上がった。
その声で目を覚ました奈都流は、原因である人物を探すためまだ覚醒しきってない状態で部屋を見渡す。
だがそこで、隣に真木がいないことに気が付いた。
昨夜彼の部屋に泊まったため、いないというのはあり得ない。
少しずつ意識も覚醒し出したこともあり、奈都流は叫びの主と真木を探すためベッドから降りた。
もう一度部屋を見渡すと、その中に1人だけ見つけることができた。
だが真木ではない、小さすぎる。
となれば先程の叫びの主かと判断し、奈都流は近付いて声をかけた。
「どうかしたの?」
後ろ姿だったために誰だかわからず、年齢の低い子であったとしても怖がらないよう優しく声をかける。
するとその子供はビクリと肩を震わせ、ゆっくりと奈都流の方を振り向いた。
「奈都流……」
「っ、嘘……!」
その子供は真木によく似ている、否、真木の幼少時の姿そのものだ。
昨夜彼が身に纏っていた寝間着をぶかぶかの状態で着ている。
肩幅も余っていて、ボタンをして頭と腕を通しただけのそれは、裾も長くてズボンなしでも充分なものだった。
至極信じがたいし、随分な格好をしているが、間違いない。
彼だ。
「司郎…?」
「…何だ。」
口調は変わらないが、子供特有の高い声で話す真木。
その声に、思わず顔をしかめてしまった。
「何があったの?」
「わからん。起きたらこの姿になっていた。」
「そう…」
原因不明。
お互い口には出さないが、彼らの表情には不安の色が伺える。
取り敢えず兵部に相談した方がいいと判断した奈都流は、小さくなってしまった真木と共にリビングへ向かった。
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