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□心は晴れ
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前々から、この日一緒に出掛けると約束していた。


天気予報でも晴れだと言っていたし、絶好のお出掛け日和。


の、はずだった。




「奈都流、走れ!」


「ちょっと待って司郎!速い…!」


現在、どしゃ降りの雨に襲われた真木と奈都流は走っていた。


「あと少しだ!」


「わかってるけど…!」


雨宿りできる場所を求め、2人は全速力で走る。


瞬間移動すれば楽なのだが、この雨が空間ノイズとなってできない。


だからといって、普通人がたくさんいるこの場所では念動力で雨を遮ることも憚られる。


どうしようもない2人はただ走って、屋根のある場所を目指すしかないのだ。




とりあえず近くのコンビニに入り、2人は呼吸を調えた。


ここでずっと雨宿りをしているわけにはいかないが、傘くらいなら売っているだろう。


案の定ここにもあと3本売られている。


おそらく他にもここで傘を買っていった物が大勢いるのだろうが、残っていたとはラッキーだ。



「急に降ってきたよね。」


「ほんと、ビックリしたよね。」


「な…」


だがほんの数秒差、真木が取る前に2人組の女性が1本ずつ傘を持ってレジへ向かってしまった。


「…………」


残されたのは1本。


他人に、ましてや女性相手に寄越せなどとは言えず、真木は残された傘を見つめる。


かなり不満ではあるが、無いよりはマシかと渋々ながらそれだけ持って奈都流のもとへと向かった。


「奈都流。」


「あった……どうかした?」


不機嫌そうに眉根を寄せている真木を見て、奈都流は首を傾げる。


「1本しか残っていなくてな…」


「っ、うそ……」


それを聞いて奈都流も驚いた。


この辺りには他に傘を売っていそうな店はない。


2人は無言の傘を見つめたまま立ち尽くす。


「……取り敢えず買ってくる。」


先に口を開いた真木は速足でレジへと行ってしまった。



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