Long
□21st
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翌朝、渚は桐壺から連絡を受けてすぐに荷物を移動させた。
自分でも驚くくらい超能力を酷使した気がする。
すべての荷物を運び終え、あとは自分が移動するだけとなった彼女は、物がなくなった部屋を歩き回った。
どこを見ても兵部との思い出ばかりで、荷物がなくなっていてもやはり胸が痛む。
暮らした期間は短いのに、随分と中身の濃い生活だったと苦笑した。
「……お別れだね。」
最後にそれだけ言い残して、渚は部屋を出る。
そしてもらった地図を見ながら、新しい居住先へと歩いていった。
***
「やっと片付いた…」
午後になり、兵部は自宅に戻ってきた。
パンドラでの大がかりな仕事で、ここしばらく帰ってこられなかったのだ。
その忙しさのおかげで、色々なことを考えなくて済んだのだが。
「おーい、桃太郎ー?」
任務には同行していなかった桃太郎を呼ぶ。
しかし、返事は返ってこない。
「何処行ったんだ、あいつ………ん?」
姿を探して辺りを見回す。
すると、テーブルの上に何かがあるのを見つけた。
出ていく前にこんなものを置いた覚えはない。
何が置かれているのかとテーブルに近づく。
手に取って見てみると、自分の名前が書かれていた。
「…っ………」
京介さん、自分のことをそう呼ぶのは彼女だけだ。
自分から突き放しておいたくせに、これだけで酷く胸が高鳴る。
震える手でそっと手紙を開き、中身を読む。
綴られた文を読み進めていくうちに、頭が混乱してきた。
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