Long

□21st
3ページ/4ページ


翌朝、渚は桐壺から連絡を受けてすぐに荷物を移動させた。


自分でも驚くくらい超能力を酷使した気がする。


すべての荷物を運び終え、あとは自分が移動するだけとなった彼女は、物がなくなった部屋を歩き回った。



どこを見ても兵部との思い出ばかりで、荷物がなくなっていてもやはり胸が痛む。


暮らした期間は短いのに、随分と中身の濃い生活だったと苦笑した。


「……お別れだね。」


最後にそれだけ言い残して、渚は部屋を出る。


そしてもらった地図を見ながら、新しい居住先へと歩いていった。






***



「やっと片付いた…」


午後になり、兵部は自宅に戻ってきた。


パンドラでの大がかりな仕事で、ここしばらく帰ってこられなかったのだ。


その忙しさのおかげで、色々なことを考えなくて済んだのだが。



「おーい、桃太郎ー?」


任務には同行していなかった桃太郎を呼ぶ。


しかし、返事は返ってこない。


「何処行ったんだ、あいつ………ん?」


姿を探して辺りを見回す。


すると、テーブルの上に何かがあるのを見つけた。


出ていく前にこんなものを置いた覚えはない。


何が置かれているのかとテーブルに近づく。



手に取って見てみると、自分の名前が書かれていた。


「…っ………」


京介さん、自分のことをそう呼ぶのは彼女だけだ。


自分から突き放しておいたくせに、これだけで酷く胸が高鳴る。


震える手でそっと手紙を開き、中身を読む。


綴られた文を読み進めていくうちに、頭が混乱してきた。



.
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ