Long
□20th
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「渚の編入パーティだし、俺が作ってやりたいところなんだけど…」
まともに料理できないんだよな、と苦笑する賢木。
そんな彼に渚は笑みをこぼす。
「気持ちだけでも充分だよ。修兄は何か食べたいものある?」
「…そうだな……、渚が一番得意なヤツ?」
「得意なもの?オムライスとか、よく作るけど…」
得意料理といわれても、よくわからない。
「じゃあそれにしてくれ。オムライスか…楽しみだ!」
ニッと笑って賢木は渚からカゴを取り上げる。
何事かと目で問い掛ければ、荷物持ちくらいさせてくれと返された。
2人は店内に入り、食材を見てまわる。
渚が選び、それを賢木の持つカゴに入れていった。
彼は食材選びをする渚を穏やかな表情で見る。
「なぁ。」
野菜を選んでいる時、黙っていた賢木が口を開いた。
「こうして一緒に買い物してると、俺たち新婚みたいだよな。」
「な…!」
突如発せられた言葉に渚は驚き、手にしていたトマトを取り落とす。
「おっ!」
慌てて賢木が手を伸ばし、それを掴んだ。
「あぶねーな…」
「だって、何言って…」
そのようなことを言われたことがない渚は、まだ驚きで口をパクパクとさせている。
「冗談だよ。言ってみたかっただけ。」
悪びれた様子もなく笑って言い、手にしたトマトをカゴに入れる。
恥ずかしくなった渚は、早足に他の食品売り場へと行ってしまった。
「…………、」
彼女の後ろ姿を見つめて賢木は眉を吊り下げ苦笑する。
そしてひとつ息をつき、去っていった彼女を追いかけた。
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