Long
□13th
3ページ/4ページ
授業中はその子とずっと話していて、まったく勉強した記憶がない。
賢木が言っていた意味がわかった気がした。
実際に行ってみないと、学校の楽しさはわからない。
そしてそのまま昼休みを迎えた。
並んで弁当を食べるのは渚にとって初めてで、ニコニコしながら食べている。
すると隣にいる彼女はクスクスと笑い始めた。
「どうかした?」
「…渚、気付かないのかい?」
「え…」
今まで苗字で呼んでいたのに、急に名前で呼ばれてどきりとする。
「…ッ、僕だよ、僕。」
「!!」
彼女の髪が短くなって、着ている服も黒くなり、スカートはズボンへと変化した。
「きょ、京介さん!?」
さっき知り合った彼女の姿は、一瞬で見知った人物に変わってしまった。
「何で…!?」
「キミが来るってわかったからね。催眠能力で僕もここの生徒になってみたのさ。」
どうやら兵部はここの生徒ではないらしいが、やはり謎が多すぎる。
「おかげで渚の違う一面が見られた。やっぱり同性との話には花が咲くんだね。」
「それで女の子に…?」
「まあね。多分他の連中には君が1人で真面目に勉強してるようにみえてただろうし、今日はもう帰るよ。楽しんできな。」
「え、あ、ちょっと…!」
渚には色々と言いたいこともあったのだが、兵部は瞬間移動で消えてしまった。
「………」
不貞腐れたように弁当を食べ出すと、渚は誰かに呼ばれ振り向いた。
「岡崎さん!」
「はい?」
「やっと見つけた。探したんだよ。」
「教室行かない?岡崎さんのこと聞きたいな。」
確かクラスの人たちだ。
名前は知らないが、顔は見たことがある気がする。
頷くと、わざわざ来てくれた女の子たちは彼女を教室まで連れていってくれた。
ナオミ以外、初めての同級生。
嬉しいはずなのに渚には何かがひっかかる。
結局、何か聞かれたけど覚えておらず、その日の授業も終わってしまった。
「じゃあ岡崎さん、またね。」
「バイバイ。」
「あ、うん。」
皆と別れて渚も教室を出る。
さて何処で瞬間移動しようか。
あまり学校に近いと見つかるし、だからといって遠いところならもういっそ最後まで歩いた方がいい。
しかし流石にここから家までは結構な距離ある。
兵部みたいに催眠能力で視覚を騙すこともできない。
「ちょっと我慢して。」
「え、」
誰かの声が聞こえたと思ったら、突然何とも言いがたい浮遊感が彼女を襲う。
目の前の景色がぐにゃりと歪み、もとに戻ったときには自分の部屋だった。
.