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□心は晴れ
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レジから戻ってきた真木は、奈都流に傘を差し出した。
「使え。」
俺は濡れても構わないから、そう言って外へと出ようとする。
そんな彼の腕を、奈都流は慌てて掴んだ。
「ちょっと!」
「……何だ。」
「2人で入るんじゃないの?」
「…………」
真木は奈都流を見て顔を顰める。
先程買ったこの傘は、安っぽいビニール製のものだ。
簡単に作られているため脆いし、あまり大きいわけでもない。
大人2人が入れるような代物ではないのだ。
「俺はいい。」
どうせこの時期の雨はすぐ止むだろう。
そう思っての判断だったが、奈都流は頑なにその意見を拒む。
「駄目よ、風邪引くでしょう?」
確かに彼女の言っていることは正しいが、2人で使えば2人ともが濡れることになる。
何よりこのビニール製では他人から傘下が見えてしまうため恥ずかしい。
「だから俺は…」
「あ、ちょっと邪魔かも。」
真木がまた拒もうとすると、よくわからない言葉に遮られた。
腕を引かれてその場を少し移動する。
辺りを見回せば、このコンビニに入ってきたばかりの客が視界に入った。
どうやら入り口を塞いでいたようだ。
「いつまでもここにいるわけにもいかないし、早く行きましょ。」
奈都流は掴んだままだった真木の腕を引いて強引に外へと連れ出す。
そしてすぐに自分と真木が極力濡れないように傘を開いた。
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