HÅyaRiGAmi
□馳せる熱※
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もう、すっかり夜の帳が下がり、辺りは暗くなっていた。
仕事を終え、編纂室のある地下から上がって来た風海と小暮がロビーを抜け、表へ出ると…
窓もない地下にこもっていたので、朝ぶりに見た外の光景に唖然とした。
一面に雪が積もっていた。空からも小さな雪粒が次々と降り落ちてくる。
「あー、やっぱり降ってましたか」
風海がそう漏らすと、小暮も少し困ったような表情になった。
今朝テレビでやっていた天気予報で『今夜は雪になるでしょう』と言っていたのが的中したようだ。
しかし、想像以上に降り積もっている。
木々の少ない都会の雪景色は、銀世界と呼ぶには味気なくて、灰色の世界と言った方が相応しそうだった。
「渋滞もひどそうであります…」
警視庁前の内堀通りは自家用車やタクシーが帯びのように渋滞しており、これでは小暮も車で帰るのは大変そうだ。
「この分じゃ、電車もちゃんと動いてるか微妙ですね」
電車通勤の風海もそっとため息をついたが、ショゲている小暮の肩に手を置いてニコリとした。
「小暮さん、今日はホテルにでも泊まりましょうか」
「ほ、ホテル!!?」
小暮はビクンと体を硬直させて、顔色を一気に赤くさせる。
奥手の小暮と付き合い始めてもう数ヶ月。
キスは何度も交わした事はあるが、まだそれすら慣れずに顔を赤くする小暮に対して、風海はそれをからかいたい気持ちになってしまうのだ。
今も思った通りの反応を示す小暮を見て、風海はフフッと笑っていた。
「心配しなくても大丈夫、普通のビジネスホテルですよ」
それを聞いてホーッと深い息をつく小暮。
そんな姿も風海は好きだった。
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