白昼夢
□こんにちわ、赤ちゃん
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「あ、あたしは嬉しい。」
「ああ。」
「ざ、ザンザスは?」
「好きな女にガキが出来て、喜ばねぇ男が居るのか?」
…それって…?
あたしを抱きしめる力が強くなる。
「…花子。産んでくれるか?」
耳元で囁く、低い甘い声。
「も…もちろんです。」
あたしは、ザンザスの方を向くと背伸びをして口付ける。
「ねぇ?ザンザス。」
「何だ?」
「どんな瞳の色の子供が生まれるか、やっと見れるね。」
昔、そんな話をして危うくザンザスに貞操を奪われそうになったことを思い出して、あたしは笑う。
「女が産まれたら、結婚させねぇ。」
でもザンザスの、その一言で笑いは凍った。
…君も苦労しそうだね。
お腹を撫でる。
「まったくだよ。」
という文字が頭に浮かぶ。
ザンザスの熱い手を握りながら、十ヵ月後にやってくるお腹の希望に思いを馳せる。
会える其の日まで。
待ってるからね。
「大好きよ。」
ザンザスに言ったのか。
それともお腹の子供に言ったのか。
二人に言ったのか。
やさしい響きは、夕暮れが差し込む室内に溶けて消えた。