■夢の間■

□紅の月-5
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「きゃあぁぁぁぁぁーーー!!!!」














平和な昼下がりは切り裂かんばかりの悲鳴により一瞬にして悪夢へと変わった。




「ここに聖女がいると聞いた…出せ!!」




表れたのは漆黒の髪に真紅の瞳の男。
後に夜を埋め尽くすヴァンパイアの王だった。












<村人は娘を隠した。守るために…でも人を超えた存在には勝てなかった。村には血を吸われ死んだ者達が溢れていった…>
















「…聖女が聞いて呆れるな。神の名を持つ者が村人を犠牲に生きるつもりか?
あと、1分だけ待とう。出てこなければこの村を滅ぼすまで止めんぞ?」



『…わ「私が聖女と呼ばれる者です。お止めなさい…」



『(Σヘレン!?)』



前に出たのは彼女の数少ない友人だった。


「(貴女は光に生きるべきよ…)…私に何の用です?」


凜とした姿で私の前に立つ彼女。
微かに震えながら彼へ歩み寄る。



「…お前か…確かに美しいが、俺を騙せるとでも思ったのか?」


男はヘレンの首を掴み持ち上げた。


「ぐっ!!」



『へレんぐっ!!?』


「(いけません!!あなた様はお逃げ下さい!!)」

セレスが跳び出そうとした瞬間口を塞がれ引き留められた。


『(グラディス叔父様…)』


彼の表情は悔しさに歪んでいた。
娘を聖女のために捧げたのだからー…




「そうか、あくまでも出さない気なら仕方ないな。
俺が血を飲むしか能がないと思ったら大間違いだぞ…?」





“ベキッ…ベキベキベキ!!ゴンッ!!”





彼の足元から亀裂が走り地面が沈み込む。
亀裂が更に裂け奈落が姿を表した。


逃げ惑う人々は次々に穴に落ち悲鳴をあげ姿が見えなくなっていく。



まるで地獄絵図な惨状だった…
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