■夢の間■
□紅の月-8
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『好きな人……か…』
結局一睡も出来なかった。
不安な事が多すぎる…
ふと時計を確認すると朝5時半を少し回った所だった。
もう少し眠る時間はあるがどうせ寝付けないだろうと体を起こした。
すると見計らったかのように電話が鳴る。
『はぃ。』
“「火澄ちゃん?ごめんねー朝早く。」”
電話の主は理事長だった。
『いぇ…何か御用ですか?風紀委員の事なら今から伺いますが…』
“「ゃ、その事じゃ無いんだ。今日は学校来なくていいから行って欲しい所があるんだ…」”
理事長の声に重みを感じた。
『お仕事ですか…急ですね。時間は?』
“「ごめん…折角帰って来たのに休みなくて…直接出向いて欲しいみたいだったよ。」”
『いいえ、悪いのは理事長ではなく協会長ですから。』
今日はそのまま協会本部へ行くと告げ電話を切った。
黒のロングコートに腕を通し髪を上げた。コートの内側、太もも、腕…至る所に針を仕込む。
『…いってきます。』
まだ眠っているだろう姉に向けて言ったー…
子の幸せを願うと言いながら子を刈る矛盾。
それで他の子らが幸せであれるなら構わない…
そう思っている…私のエゴだ。