■夢の間■

□紅の月-9
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『ただいま…』


「お帰りなさい。」


一条と分かれた後、理事長への報告もせずに火澄は自室へ帰ってきた。
当然のように出迎える姉…いつもなら嬉しいはずのソレが今はとても怖い。


「今日はお仕事だったのね…怪我はない?」


火澄の服装を見つつ問いかける。


『えぇ…それで……ね』

言葉が出てこなかった。
今のままでいたいのに居られない、その事も…





そして






全ての原因が自分にあるその事実に対しても…





全てが





怖いから。






火澄は俯き微動だにしなかった。
それを見かねてか煉はゆっくりと言葉を紡ぐ。




「私の望みはね…大好きな妹の手で逝くこと……」


『っ!』


火澄の肩がピクリと震える。


「だったわ…でもそれは道が無いと思っていたから。
でも、道はあった…貴女が示してくれたから。


例え皇の理に背く事になろうと私は貴女が示してくれた道を行くわ。

だから…貴女の血をほんの少し私に頂戴?」


『…姉さ…ん』


自然と涙が出た。


生きることを選んでくれた。
ただそれだけが嬉しかった…







でも…







『伴侶ではないの?』


そう、隷属ではなく伴侶として…
確かな形で姉を迎え入れたかった。


「私は力はいらないわ…ただ火澄ともう少し一緒にいたいの。
だから…その力は他の誰かに使いなさい。いるはずよ?








貴女の大切な人ー…」
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