オリジナル小説置き場
□さよなら My heart
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「……遺品?」
「そうだ。赤井さんの方から、一部を引き取ってくれるように頼まれたんでな」
「ちょ…父さん、遺品だよ?いわゆる、死んだ人の愛用品だよ?そんなの良く引き取る気になれたものね」
「いや…舞が少しでも孝太郎君の事を思い出していけるように、と思ったのだが。……杞憂だったか?」
…孝太郎君?
「…誰よ、『孝太郎君』って」
「…やはり覚えてないか…。無理もない事だがな」
父さんは段ボールから色々取り出した。野球帽、ユニフォーム、そしてあの時計……
そんな段ボール越しの父さんに問いかける。
「……ひょっとして、交通事故で亡くなったあの孝太郎君…?」
「そうだ」
「…私がちっちゃかった頃、良く遊んでもらった…あの孝太郎君?」
「…そうだ」
「…私と何か関係があるのかしら」
「……」
父さんは手を止め、黙った。
「『思い出していけるように』…って、まるで私と彼が特別な関係にあったかのような言い方ね?」
「…舞、聞いてくれ」
父さんは静かに口を開く。
「…ただの交通事故ではない」
「『ただの』?…彼は不慮の事故で死んだんでしょ?あまりに突然だったから、物心ついてなかった私には全然分からな…」
「違う」
「…?」
「彼……孝太郎君は…」
「…舞をかばって亡くなったんだ…」
「…は?」
「今まで黙っていたが――自分を責めるタイプの舞の事だ…言うに言い出せなくて。…この際、真実を受け止めてもらおうと今回は赤井さんと相談して……」
「……ふざけないでよ…」
「…舞…?」
「つまり…私…私は……自分が一人の人間を犠牲にしといて今まで、のうのうと毎日を生きてきた、ってワケね…」
「!…舞、それは違―」
「……ッ!」
「舞!何処へ行く、舞!」
――涙が枯れるくらい、ってこういう事を言うのね…
一年前のあの時はそう思った。
…しばらくは両親とも口をきかなかった。
私の一生を左右させるような真実を隠していた2人が許せなかったから。
でも、これではっきりした。
孝太郎君…彼がいたから今の私があるんだ、ってコト――――