血濡れた情報屋
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「…私はね、風を操って情報を手に入れてるの、それ故疾風って言われてるわけ」
黙って頷く彼は、先を促していた。
前置きはいらない、そこまでは知っていると。
「これは知ってる?…血溜まりは疾風の通り道」
「……知らない」
本当は知らないなら知らないで良い。
あまり気持ちの良い話ではないから。
「私は捕まってた、けど銃もナイフも、殺気でさえ向けられてない」
「…ならどうして捕まってたの」
痛いところを突かれてしまった、ここは情報屋として本当に言いたくない情報だ。
「…睡眠薬を盛られたの、これが毒なら相手は死んでたし、私は捕まらなかった」
「睡眠薬に気付けなかったなら、毒にも気づけないよ」
そう、彼の言う通りだ。
でも反応するのは私じゃない、風だから。
「…風を操って情報を手に入れてるってさっき言ったでしょ?」
彼が頷くのを見守りながら、もう一度ゆっくり深呼吸した。
「…私が操れるのは情報を集める時だけ、それ以外で風を操る事はできないの」
「…なら、風が勝手に君を守ってるって事?」
彼の言う通り、風が私を守ってくれてる。
私は頷いて、また口を開いた。
「殺気を向けられると、風が反応してその人に風穴を開けるの…そして、ああいう風になるわけ」
「それで‥血溜まりは疾風の通り道、かい?…でも君、さっき僕に押さえきれないって言ったよね」
彼は本当に察しが良く、細かいところまで良く覚えている。
流石、元並盛中風紀委員長であり並盛の秩序だった男、と言ったところか。
「少しだけね、押さえる事はできるようになったの…誰彼構わず殺すわけにはいかないでしょ」
「ふーん、そう」
止まっていた足はまた動き出して、また私は置いていかれそうになり、早足で追い付いた。
「…君の話、もっと聞かせてよ」
彼が咬み殺す以外の目的で楽しそうに他人に興味を持つのを珍しいと思うのは、初対面なのにおかしいだろうか。
私も彼に少しからず興味を持った。
否、少し前から持っていた。