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□無くしたリングが泣いている
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世の中、タイミングというものが大切だ。
酔った勢いで、婚約宣言をされても、世の中の女は全く、全く惚れる事はない。らしい。

クリスマスという、雰囲気。
それに、俺は飲まれてしまった。
あと、お酒に飲まれた。確実に。

「連絡も取れないのかよぉ」
「とれん。おねーさん、この店で一番高いコニャック!」
「あ、お茶で良いわ。これこれ、玄米茶お願いね」

世の中の飲み物で、一番にお酒が俺は好きで。
二番目はカルピス。

「世の中で、自分を潰すものって何か知ってっか」
「金」
「金と女と酒らしいぜ。お前、酒も飲めば、金もあるだろ。やばいんじゃねー」

このデブは俺の前でひゃっひゃ笑う。

「そうじゃ、金もあるから、お前みたいなイベリコは食べれるぞ!」
「イベリコ言うな」

もう疲れた、そういうとイベリコ豚は電話をかけ始めた。
タクシーなんて、このネオンできらめく東京、拾うことができるのに。
今からお家に帰って、タクシー代を払うことなんて容易なのに。

「おー、シクヨロ!」

いまどきそんな、死語流行らない、そう、誰か、このイベリコ豚に




「雅治、毎回毎回飲みすぎだよ。酒癖悪い」

いつの間にか、スーツが週末に買ったユニクロのスウェットに変わってて。
テーブルに置かれたのは、ライムの入ったペリエ。
彼女の持ってるグラスには、あの時開けた、ワイン。

「なんかさ、ドッキリなのかと思ったの」
「うん」
「この年じゃんか、結婚ぐらい考えるよ。
たぶん、このまま行ったら雅治と結婚しちゃうんじゃないかなーってことも思ってた。
でも、雅治、あんな酔った勢いで言っちゃうんだもん、辛いじゃん。
あと数十年したら、きっと笑い話になるんだろうけど、今じゃなんか、こう、しっくり来ないって言うか。
雅治が、指輪買ってることも知ってたし、さ」
「なんで!え、なんで知っとったの!」
「え、そこまでびっくりするんだ。指のサイズ聞いて来た癖に、よく言うよね」
「自然な話の流れだったのに」
「ぜんぜん!」

「なあ、もう一回、言うから」
「うん」
「俺と、結婚して?」
「かわいいから、してあげる!」


お前よりかわいい顔、ないから!馬鹿!


「でも、あの時のリング、捨てちゃったから、買いに行こうな!」
「あの時のリング、きっと、泣いてるんだろうなぁ」
「俺のたちの幸せを祈って泣いてるんだよ」


こんなベタな誕生日も、ありでしょ!ねえ、神様!

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