V

□5章 指針


『……ハハハ……。
最大の邪魔デあるカオスは消えタ。
アとは全ての消滅ヲ待ツのみ。

あがきタケれバ、アガくがよい。魔術師ドモ。
……無駄あがキとなるだろうがな』


耳に残る哄笑を残して、白い光はすぅっと空に溶けていった。

気配と殺気が完全に消えても、ブラックマジシャン達はその場に立ち尽くしたままで。
長い沈黙のあと、3人はやっと構えていた杖をおろした。

同じように、視線もつい下に向いてしまう。


「カオス様が……死んだ、なんて……」

「………………っ」

「……。…兄弟…」

「お、お師匠様、大丈夫ですか…?」

「…ああ」


……考えなければならないことが山のようにある。
しかし、頭が上手く回らない。

悔しいがあの邪悪な光の言う通り、
ブラックマジシャンは指針を失ってしまったように感じていた。

今まで、ブラックカオスの存在と言葉があったから、この非常事態の中でもなんとか立ち回ることができた。
しかし、それが途端に失われ、残ったのは困惑と喪失感のみ。

色々なことが一度に起こりすぎて、心が状況に追いつかない。


「……。
えっ、と……これからどうします…?」

「どうする、ったって……」

「……」

「――ひとまず、サ店にでも入らぬか?
せっかく現実世界に来たのだ。我はカプチーノなるものが飲みたい」

「カオス様…今、それどころではないでしょう。
あなたが死んでしまったかもしれないという、の、に…………」


……。

…………。

……………………。


「「「――――は?」」」

「む?」

「……か…………

カオス様ぁぁぁぁああああああ!!??!」
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